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伝えたい
初めて逢ったときからそう感じた。
『この人とは一度しか逢えない』と。
だから、これが最初で最後。マリーは悲しみに溢れた瞳に変わっていた。
「どうしてですか?」
「何故か、そう感じたからです。もし、今私が伝えてもそれは不可能となってしまうことでしょう」
「……いいえ。伝えてください」
「――――星が綺麗ですね」
知識で溢れている貴公子なら、分かるはず。何て返されるだろうか。
緊張のあまり、視線を逸らした。
「夜明けの空も見たいです」
その言葉を聞いて、安堵した。
ありがとう、ありがとう。心の中で何度も、マリーはお礼を言った。
でも、きっと結ばれない。それが宿命。
空から淡いピンクの花びらが舞ってくる。少し冷たい風と共に、私達を祝福するかのように。
でもっ――――
「明日、戻るんです国へ」
ほら、やっぱり。マリーは俯いた。
「婚約者が、いて。ポーランド貴族の姫君らしいです。父上が以前、話していました」
「婚約者……ですか。やはり、いるのですね」
「貴女にだって、いるでしょう?」
月に照らされた桜を見て、貴公子は一息つき口を開いた。
「生まれ変わったら、またここで逢いましょう」
目頭が熱くなり、雫が流れ落ちた。
「今は不可能ですが、きっともう一度逢えるでしょう。必ず、逢いましょうね?」
「ええ……絶対に……」
「――――でも、今だけは一緒に居たい」
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