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年月が更に経ち、サリーはもう年老いていました。
そして、今まさに最期の時を迎えようとしています。
ベッドに横たわるサリーの周りにはカケルや大好きな子供たち、孫たち、そしてサリーがダンスを伝えた人たちがたくさん集まって彼女の最後を涙ながらに見届けようとしています。
サリーはどことなくこの上ない幸福感に包まれていました。大好きな家族との別れやこの地球を去る悲しみもありましたが、何だかやっと肩の荷が下りたような、大きな大きな解放感にようやく包まれるような、とてつもない安心感を得られるような気分がしています。
カケルが最後にサリーの手を握り耳元でこう囁きます。
「サリー、この地球でよく頑張ったね。ネクタリーナを離れて、ララーベルである事を忘れても君の心はずっとあの星で暮らしていた頃のように穏やかで温かかったね。よく自分の運命と使命から逃げずにやり切った。ようやく皆の所に帰れるよ。ここに来てくれて本当にありがとう。」
サリーの頭にぼんやりと今まで忘れていた光景がよみがえります。
ネクタリーナ…ララーベル…黄金の木々…
その時、サリーはようやく昔のことを思い出しました。
翼を持った皆と宙に舞いながらダンスしたこと、それが自分たちの持つ言語だったこと、魔法を自由に操っていたこと、花冠を金色の樹液に浸して頭に飾った時のこと、全部が走馬灯のように頭に駆け巡りました。
そして、そっと瞳を閉じた時、目の前にたくさんのララーベル達が自分を迎えに来ていたことを知ります。
仲間たちがサリーの手を引き、そっと体を起こし彼女の背中にまた羽を戻しました。以前の時よりも、もっともっと上等で美しい羽根です。
今度は何不自由なく飛べそうです。
サリーは仲間のララーベル達と一緒に窓から長い梯子をつたい、空へ駆け上がっていきます。梯子の一番上まで来たとき、少し戸惑いましたが、もう後ろを振り返ることなく躊躇なく空へと飛び立ちました。
長い長い使命からようやく解放されたサリーは解放感と嬉しさで溢れていました。
ネクタリーナまでの旅の途中で、自分が地球上で経験した全てのことを一つ残らず伝えたいと仲間たちに急いで伝えました。
特に地球には素晴らしい愛のカタチがあるのだということ、それは金やお金以上の価値があること。でも殆どの人間はそれに気づけていないという事を他のララーベル達に懸命に教えました。
サリーは惑星に帰っても、地球で出会った愛する家族や友達のことを頭に思い浮かべまた会える日が来るであろうことを夢見てくらしています。今度はララーベル達に言葉を使った新しいコミュニケーションの方法を広めるために今もネクタリーナで懸命に働いています。
今日もこの広い宇宙の片隅にあるネクタリーナという惑星で、サリーという一人の風変わりな使命を背負った妖精が、昔この地球上で覚えた言葉をララーベルという可愛い可愛い妖精たちに教えていることでしょう。
おわり。
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