標的

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 ピンポーン 「郵便でーす」 「はーい。いまいきまーす」  勉強から解放され家でテレビを観ていると、インターホンが鳴った。  配達員のおじさんから封筒を受け取る。  合格通知だ。この紙に記されている文字によって僕の生死が決まる。  部屋に戻り丁寧に封を切る。  …ふぅ。大丈夫。やれるだけのことはやった。  中から紙を取り出し、深呼吸して開く。 「やっ…た。…受かった」  気付いたら涙が溢れていた。    父が帰ってきたらすぐに報告しよう。  紙を握りしめた。 「お父さん。話があります」  受験当日、父が玄関で待っていた父と同じように玄関で待機していた。  父は興味が無いと言わんばかりの声色でなんだ、と言う。 「受かりました。S大」  合格通知を差し出す。  初めて父親に向かって笑顔を向けた。 「…そうか。疲れてるんだ。どけ」 「え、それだけですか…」  え、なんで。どうして。僕をS大に入れたかったんじゃないのか。受かったんだぞ。もっと喜べよ。 「なんだ、褒めてもらえるとでも思ったのか?で合格できたんだぞ。俺に感謝しろ」  僕のなかでなにかが切れる音がした。 「感謝されるのは僕でしょう。貴方が入れなかった大学に貴方の望み通り入ってあげたじゃないですか」 「調子に乗るなっ!!」  避けなきゃ。と思った時には既に殴られていた。 「俺に勝ったつもりか!?お前が合格出来たのは俺のおかげだろ!?お前は何もしていない。俺の実力だ。ひとりじゃ何も出来ない癖に」  もうどうでも良かった。    胸ぐらを掴んでくる父の手を払い、鳩尾当たりを思い切り殴った。  父は腹を押えその場にうずくまる  こちらを睨んでくるが、全く怖くなかった。  中学生の時は勝てなかったが、今なら勝てるかもしれない。 「ひとりじゃ何も出来ない?本当にそうでしょうか。僕はもう立派な人間ですよ」 「…なにが、言いたい」 「一ヶ月以内に貴方を殺します」 「は、なにを言っているんだ…」 「ずっと貴方が憎かった。僕の人生を台無しにした貴方を、殺したくて殺したくて仕方なかった。僕は貴方の人形なんかじゃない。意志を持った人間です。僕は本気ですよ。もし一ヶ月以内に殺せなかったら、これからも貴方の人形として貴方の望み通り生きてあげますよ」  父は僕の殺気に気圧されていた。  僕は不敵な笑みを浮かべ部屋に戻った。
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