1人が本棚に入れています
本棚に追加
最後の一枚
高校を卒業後、私は大学に進み芸術系を学んだ。
大学を卒業後、祖父と同じように写真家となった私は、大人になっても変わらずに毎日のように写真を撮っていた。最初の頃は全くだったが、今では写真家としてそこそこ稼げるようにもなっている。
そして、そんな私の成長を形にしたようなこのアルバムは、言わずもがな、とりわけ深い思い入れがあるのだ。
だから、最後の一枚はそれに相応しいとびきり「綺麗なもの」が良い。
「何しているの?」
私は背後の声に振り返った。
彼があの頃と変わらない優しい微笑みを浮かべていたから、私も笑みを返す。彼は出会いから10年経った今、社会人として会社で働き、私の恋人となっていた。
依然として側にいる彼に、私はアルバムを見せる。
「ほら、アルバム。もう次で最後の一枚なのよ」
彼はアルバムを覗き込んで、ほう、と息をついた。
「そっか。それは、おめでとう、かな?終わるのはなんだか寂しい感じもあるね」
私はアルバムを撫でて頷く。
「そうなのよね……。それで、せっかくの最後の一枚、何か特別なもので終わりたいなと思っていたのよ」
「そうだね……」
彼は口元に手を当てて考える素振りをする。
「どうしたの?」
「いや、なんでも」
私が尋ねると、彼は珍しくいたずらっぽい笑顔を浮かべて首を横に振った。
「でも、そうだな……予言しようか」
私が首を傾げていると、彼は心底楽しそうに言った。
「ゆうは丁度一ヶ月後に、アルバムを完成させると思うよ」
彼の突然の予言に、私は目を瞬かせ。
「あははっ、何よそれ!」
一拍後、大きな声を上げて笑った。
最初のコメントを投稿しよう!