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「もしかして二人の関係は秘密なの?」
「……まあ、はい、その……、まだ秘密です」
「安心して。僕も銀矢さんも警察関係者だ。秘密はかならず守るよ」
「……」
「これは僕らのトップ・シークレットだね」
ウォンジェはひとさし指を自分の唇に当て、片目をつぶってみせる。玲は悔しすぎて言葉も出ない。
――この余裕、この色気、この……グローバル感。くそっ。
玲がそんなことを思ってめらめらしているのに、ウォンジェは気づかないふりをする。「さて、そろそろ失礼しようか」と軽やかに腰を上げた。
「今日はありがとう、玲君。僕は君たちの恋を心から応援するよ。今後、真咲を遊び相手に指名するのもやめておこう。だからね」
そこで言葉を切って「ンフフ」と含み笑いをする。
「最後に一度だけ、真咲をベッドに誘ってもいい? プライベートで」
「だめですよ、何を言ってるんですか」
目を吊りあげる玲を見て、ウォンジェがますます楽しそうな笑い声をあげる。
「君は僕から真咲を取り上げるんだ。それなりの代償は必要だよ。えーと、日本語で何て言う? そういう……幸せなときに、はしっこを分ける、みたいな言い回しがあるでしょ、銀矢さん?」
「『おすそわけ』だな」
「そう、それ! 幸せのおすそわけで、真咲とデートしてもいいでしょ?」
「だめですってば!」
玲はムキになって、つい大声を出してしまった。しかしウォンジェは「あはは、かわいいね、玲君。お大事に」と言いながら銀矢とともに病室を出て行く。やがて静かになった。玲はぐったりしてベッドに寝転がった。
――あれはほんとに事情聴取だったのかな。ウォンジェさんは、たんに俺と真咲の関係を探りにきただけなんじゃ……。
彼らとのやりとりを思い返してもやもやしているうちに、ふっと眠気がやってきた。体調もまだ万全ではないのだ。
――すこし疲れた。何か楽しいことを考えよう。
退院したら、真咲と旅行に行く約束をした。玲は好きな人の笑顔を思い浮かべてあたたかな気持ちになる。そのまま目を閉じて、つかの間の浅い眠りに落ちていった。
(おしまい!)
(第二部の最後へ戻る…じゃなくて、第三部へつづく!)
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