第四話 夜這い ※

3/4
186人が本棚に入れています
本棚に追加
/160ページ
 わざとのように卑猥な言葉をつかうシオンにあおられて、もう止められなかった。頭の中が真っ白になる。全身を大きく震わせて真咲は達った。真咲の身体が脱力するまで待って、シオンがそっと口を離す。彼の唇からたらっとこぼれたものから、真咲は思わず目をそらした。 「いっぱい出たね。ごめん、ちょっとこぼしちゃった」  シオンはTシャツの袖で口元を拭ってから、甘えるように頭を真咲の膝に乗せてきた。彼の薄褐色の髪の毛を指に絡めてみる。まっすぐで細い髪の毛がサラサラとこぼれた。 「……なぁ、シオン」 「なに?」 「人間のセックスと獣身のセックス、どっちが気持ちいいの」  シオンは真咲の膝に頭を乗せたまま、薄く笑う。 「そんなの決まってる。……獣身だよ。ねえ真咲。ちゃんとセックスしてみる?」  真咲の頭のなかで何かがはじけ飛ぶ感覚があった。シオンの上半身を抱えてベッドに引きずり上げる。Tシャツの裾から手を入れて胸の突起に触れる。シオンが小さく身体を震わせた。 「俺も真咲の気持ちよさそうな顔をみてたら、やっぱり抱いてほしくなってきたよ」 「……うん」 「脱いで。真咲の身体が見たい」  シオンの希むように真咲は服を脱いだ。 「……いい身体してるね、真咲」 「シオンも脱げよ」 「うん。ちゃんとゴムも持ってきたよ。プルプルの潤滑油つき」  そういってシオンは、ショートパンツのポケットからコンドームを取り出してみせる。真咲はシオンがTシャツを脱ぐのを手伝ってやった。シオンの肌はすべすべと温かくて気持ちがいい。小柄だが引き締まって、均整のとれた身体つきをしている。 「獣身でエッチするときはね」  耳元でささやかれて、真咲の身体がまた熱くなってくる。 「触覚とか、嗅覚とか、そういうのをすこぅしだけ獣身に寄せるんだ。ぜんぶ獣身に振ったらダメだよ、猫になっちゃうから。ちょっとだけっていうのがいいんだよ」 「どうやって獣身になるんだ?」 「エロいことしてるって意識に集中するんだよ。……ねえ、下も脱がせてよ」 「……」  シオンに言われても、真咲にはまだためらう気持ちが残っていた。しかし、彼の下半身に硬い感触があるのに気づいたらもうだめだった。目の前の欲望に集中することに決める。ひと息に彼のショートパンツを引きずり下ろす。しかしそこで呆気にとられて手が止まる。 「……なあ、シオン」 「なに?」 「いつもこんななのか」 「やだなあ。そんなわけ、ないじゃん。今日は特別にやる気満々なんだよ」  シオンは下着をつけていなかった。しかも、すでにしっかり勃っている。 「真咲。俺のもさわって」 「……うん」  真咲はシオンのものにそっと触れた。シオンは「そんなビクビクしなくても大丈夫だよ」と綺麗な歯を見せて笑う。彼の口元に小さな尖った牙が見えた。真咲は信じられない思いでシオンの顔を見ていた。  ――獣身になると、牙まで出てくるのか。  シオンが優しく真咲の頬をなでながら意外なことを言った。 「真咲、すっごくきれい。猫の目になってるよ」 「えっ」 「じょうず。これまでのセックスで猫の目になっちゃったこと、なかった? 普通のヒトとしてたんでしょ」 「ないと思う。こんなヤバい気持ちになったのも初めてだし」  シオンが愉快そうな笑い声をたてた。真咲の手のなかにあるものがぐっと硬くなる。まともに思考できなくなっていく。  ――ああもう。なんなんだよ、この感覚。くそっ。 「真咲はどんなスタイルが好き? ネコ科らしく後ろからやる?」 「前がいい。顔が見たい」 「いいね。俺も同じこと考えてた」
/160ページ

最初のコメントを投稿しよう!