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「もしもし、そこの方。手品を見ていかないかい」
「おや、これは珍しい。今時、大道芸を見られるとは。しかし、生憎持ち合わせが無くてね」
「構やしないよ。私、手品師を初めてまだ日が浅くてね。練習がてら、こうして道行く人に声をかけているのさ」
「なるほど。それなら、一つ見てやろうではないか」
「流石ダンナ、気前がいいねえ。では、私お得意の手品、消失マジックを見てもらおうじゃないの」
「ほう、それは物が消えるとか、そんな感じの奴かい」
「お察しの通りさ。じゃあダンナ、まずお金はあるかい?ちょいと貸して欲しいだが」
「金かあ、今持ち合わせが一万円しか無くてね。きちんと返してくれるんなら、こいつを渡そうか」
「ほう、そんな大金を!やっぱり気前がいいねえ!それじゃあダンナ、こいつをじっくりと見てくれ」
「ほうほう、じっと見るぜ」
「そうしたら、こうして一万円札の前に手を翳すぜ」
「おう、手で見えなくなったぜ」
「そうしてこの手をサッと取る、と……!なんとビックリ!一万円札が消えちまったぜ!」
「おいおい、そんなこと言って片方の手に隠してるんだろ?それくらいじゃ驚かないぜ」
「そう思うなら、この手のひらを見てくれ!どこにもないだろ?」
「ふむ、確かに無いな。でもこっそりポケットか何かに入れたんだろ?俺は騙されねぇぜ?」
「疑りぶけぇダンナだ!それでこそ、手品のしがいがあるってもんだ!それじゃあ、今度はこの手のひらを見てくれや。こいつが突然消えたら、流石のダンナも驚くぜ?」
「ほう、だったら見ようじゃねぇか。どれどれ、手のひらをしっかりと見るぜ」
「そうしたら、この手のひらが、突然、目の前から……」
「……消えた!!おいおい本当に消えちまったよ!!まるで空気に溶けるように無くなくなっちまった!!すげえなアンタ!!……あれ、アイツどこ行っちまったんだ?あれ、結局金も帰ってねぇぞ!!一万円持ってかれちまったぞ!!おいどこ行った!!戻ってこい!!おい!!!金返せ!!!」
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