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「あの時は本当に落ち込みました。さっきは厳しい父だったと言いましたけど、ちゃんと愛情を注いでくれていたことは分かってましたから。そして俺以上に、母さんの落ち込みようは見ていられなかった……今思えばたぶんそれからです。あの人が変わってしまったのは」
「と言うと?」
「父さんの死以降、母さんは俺の生活態度に厳しく口出しをするようになったんです」
なんだそんなことか、と思ったのがつい顔に出てしまったのかもしれない。青年は「これから詳しく説明しますから」と早口で付け加えた。
「実は父さんの死の直後、友人ができたんです。落ち込んで、教室でいつも以上にボーッと過ごしていた俺に、彼の方から声をかけてくれたことがキッカケでした」
「ほう」
「さっきも話しましたけど、恥ずかしながら俺は友人ができたことがなくって。父を失ったばかりの俺にとって、彼は新たな光でした。それでつい嬉しくなり、放課後に毎日彼と遊んでいたんです。それを母さんは良く思わなかったみたいで」
「お母さんは何と?」
「『そんな友達と付き合うのはやめなさい』と。初めて友達ができたっていうのに、あの人はちっとも喜んでくれませんでした」
青年の言葉から俺は被害者の気持ちを推測する。
きっと、厳しかった夫が亡くなった分、自分が息子に厳しくせねばと考えたのだろう。夫の代わりを務めようという気持ちばかりが先走り、つい余計な口出しをしてしまったのかもしれない。
俺には子供は居ないけれど、被害者のその気持ちはなんとなく分かるような気がした。
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