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「母さんの暴挙を同級生に見られて、顔から火が出るほど恥ずかしかったのを覚えています。友人からも後で『君のお母さんはいわゆる毒親じゃないか』と言われましたし」
そうだ「毒親」だ。子供にとって害をなす、つまり毒となるような親のことを近頃はそう呼ぶらしい。
「俺は学校から帰ってすぐ母さんを問い詰めました。でもあの人は『あなたのためにやってるの』『悪い影響を受けないか心配なの』の一点張り。話になりません。その頃からです、母さんに対して嫌悪感が募り始めたのは」
青年はそう言って大袈裟に肩をすくめてみせた。
確かに、俺が親でも陶酔的なこの青年の将来は不安になるかもしれない。だけどたぶん、学校に乗り込んだりはできない。というかしないと思う。
子を大事に想うあまり暴走し、毒となり、結果その子からも憎まれてしまう。なんと悲しきことかな。
これまで数え切れないほど取り調べをしてきたが、そのたび俺はいつもやるせない気持ちに襲われる。
「俺は毎日学校で友人に、母さんについて相談しました。するとやっぱり、母さんは自分自身の寂しさを埋めるために俺に執着し過干渉になっているんじゃないかと、そういう結論になりました」
「ご友人がそう言ったの?」
「はい。彼自身大変な思いをしているのに、俺のためにわざわざ毒親について調べてくれたんです」
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