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赤い祠
あれは失われた30年と言われた、平成の出来事だった。
ゴールデンウィークの連休。当時付き合っていた人とせっかくだからどこかに出掛けようという話になった。
あれは天気も良くとても気持ちの良い日だった。
計画していた時は車で出掛けようかと思っていた。しかし連休中は事前の交通情報によると目的地までは例年かなりの渋滞が見込まれることが分かった。
その為急遽電車で出掛けることになったのだった。
私達は途中で各駅停車から急行に乗り換え、2時間程で長閑な観光地へと無事到着した。
目的地に着く頃には電車の中の人も減り連休中の混雑からは逃れることができた。
駅の改札口を出て付近の案内表示を見る。目的の神社には道なりに歩いて30分ほどで到着するらしい。
山も近くにあるせいか空気も爽やかで近くに流れる川の水も澄んでいて綺麗だった。
駅の周りは昼間なのに何故か少し薄暗い感じがした。それでも暑くもなく寒くもないとても気持ちの良い日だったので歩くのには丁度よかった。
観光地なだけあって比較的歩きやすくきれいな道だったのと、車での観光客が殆どでわざわざ電車で来る人が少なかったので当初予想していたよりも人気が無くゆったりした気分で神社まで歩く事ができた。
しかし目的地まで来るとさすがゴールデンウィーク。どこから集まったのかと思うくらいに、車が駐車場入場渋滞を起こしていた。
人は都会の雑踏や仕事のストレスから逃れられると、のんびりした気分を味わえるので心の余裕ができるらしい。
やっぱり自然は無条件に人を癒すのだな、と改めて思ったものだ。
同行者、以後はAさんと呼ぶことにする。
Aさんは細身のわりに良く食べる痩せの大食いを地でいく人で、痩せているのにやたらと汗をかく人だ。
食べたものは一体何に消費されているのだというほど食べていた。
不思議なのはいくら食べても太らない、どこか悪いのかと言えばそうではない。
汗かきのことと燃費の悪さを除けばとても羨ましい体質である。
話が逸れたが、そんなAさんと食事をした後に神社を拝観し、ぶらりと観光を済ませて土産を買うと結構な時間になったのでまた駅まで歩いて帰ることにした。
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