確かに何かが触れたはずなのに

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確かに何かが触れたはずなのに

 私の友人の1人に霊の姿が見える人がいる。 それは一見、生きている人間のように見えるのだと友人は言う。 随分前には普通の人間のような霊だけでなく、 生首だけの霊も見えていたその人。 いつの頃からか、 生首などと言ったグロテクスな類いは見なくなったという。 人生で色々あって人として成長(?)したからなのだろうか。 それとも心の保ちようなのか。  そんなその友人が先日気味の悪い思いをしたと話していた。 その日友人は社内で書類を作成していた。 社内は人がチラホラ数人の職員がいる程度。 隣に誰も座っていない時にそれは起きた。 突然、肩をトントンと叩かれたのだ。 パソコンから視線を外し周りを見ても誰もいない。 その前に誰かが近づいてきた気配すらなかったそうだ。 同僚だったら普通は声を掛けてくるはずなのに……。 その同僚もいない。 もう一度社内を見渡す。 すると事務の女性が離れたところに座っているだけだった。  そう言えば。 そんな話を聞く数日前にその友人から聞いていたことを思い出した。 帰宅途中、信号待ちをしていた時のこと。 突然後ろから突然肩を叩かれた。 ハッとして後ろを振り返ったら誰もいない。 居合わせたのは少し離れた場所にいた自転車に乗った人だけ。 とても肩を叩いてすぐに戻れる距離ではない場所に。 突然後ろを振り向いてその人と目が合ってしまい 気まずい思いをしたそうだ。  割とお人好しの部類に入るその友人。 霊は存在に気付いてくれるその友人に何か訴えたかったのか。 それともちょっと悪戯されただけなのか。 その後、会社で姿の見えないものから何かされることは 今のところは無いようだ。
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