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 夏至の頃は1年の中で1番日が長い。 だから冬に比べて朝日が昇るのも早いし夕暮れ時も遅くなる。 先日、昼間集中的に降った雨が帰宅の頃にはすっかり止んでいた。 念の為持ち歩いた傘はその日はあまり活躍することがなかった。  もう日が沈んでしまう、丁度そんな頃。 なぜかその日は買い物をする気になれず、家路を急いだ。 適当に、何か家にあるものを食べようと思いながら歩いていると 道の途中でスマホを空に向けている人が数人いた。 何かを撮影しているその先を見ると大きな虹が出ていた。 虹の内側がほんのり白くそこだけ別世界のような虹。 綺麗だな、と思いそのまま足をすすめた。 道幅が広く、視界も広がった場所に出た時それは見えた。  二重の虹。 内側に大きな七色の虹は、まるで地面から生えているかのようにしっかりとしている。 その外側に少しうっすらと、しかし肉眼ではっきりと確認できる虹が出ていた。  思わず私もスマホを出してそれを撮っていた。 翌日。 昼休み、同僚にそのことを話し写真を見せるとこんなことを言われた。 「なんだか良いことがありそうですね」と。 自然の美しさは人の心にゆとりを与えてくれる。 どこか遠くへい行かなくても、 少し立ち止まれることができるのならば 癒しは案外近くにあるのかもしれない。  その数日後。 いくら探しても見つからなかった、 無くしたと思って諦めていたもの。 それが掃除をしていたらひょっこりと出てきた。 しかしそこはいつも隈なく掃除していた場所。 私は不思議に思いながら、出てきてくれたものを綺麗にした。 今は無事、あるべき場所へ戻っている。
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