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受け渡し
思わず声を上げてしまう程の痛みを体験したぎっくり腰以来、
定期的に診てもらっている治療院での出来事。
治療を受ける前日、
会社の付き合いでいつもより少し帰りが遅くなったこともありその日も少々寝不足気味だった。
通いなれた道を歩き診療所まで到着。
予約の時間よりほんの少しだけ早めに。
ほんの少し予約時間を過ぎてから治療スペースへと案内された。
まずいつものように気になるところがないかを聞かれる。
腕に違和感があることを伝えると腕が上がるかどうかを確認された。
腕は問題なく上がることから◯十肩ではないけれど
放っておくとそうなる可能性があるからと言われ、
その日の治療が開始された。
治療開始早々言われた言葉。
「大分お疲れのようですね。急に眠気に襲われました」
特に寝不足だとかなんだとか、そんなことは伝えていないはずなのに。
まあ、治療を受けにくる人はある意味みんなお疲れなのだとは思うのだが。
でも、治療師の先生が急に眠気を感じるくらいなのだから大概なのだろう。
何年も通っていて初めて言われた事に驚きを隠せなかった。
これまでも寝不足なことは何度もあったはずなのに。
昨日ご一緒した方は持病を持っていると言っていたことを話すと
「あー、それかもしれないですね」
と治療師の先生に言われた。
人は気の受け渡しをするので、意図せずもらってしまったのではないかと言うのだ。
昨日の会社の付き合いはそこそこ楽しかった。
しかし、心の底から楽しかったのかというと違う気がする。
そんな話をしていると、先生が断りを入れて飴を口に入れた。
なんでもエネルギー不足になると動けなくなるので応急処置なのだとか。
その後治療が済み帰る頃にはいつになく体が軽くなっていた。
私は悪い気を渡してしまったことに少なからず罪悪感を感じながら、
夏の日差しを避けつつ家路を急いだ。
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