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その後通夜を経て葬儀の日。
喪主はもちろん父である。
葬儀は滞りなく進行し喪主からの最後の挨拶になった時。
私の隣にいた霊の見える親族が私にだけ聞こえるように私の耳元でボソっと呟いた。
「今、喪主の隣で故人も一緒に頭下げているよ。よっぽど心配なのかな……」
その姿は白装束だったという。
なぜその親族がそんなことを言ったのかというと、父はかなりの自由人で周りに迷惑をかけるような人間だからだった。
ザ・昭和のオヤジである。
しかし、父を心配するのも大概にして母はきちんと成仏して欲しいものだとその時の私は思っていた。
葬儀の後、10日程経った日曜日。
2階のベランダで洗濯物を干し終わり1階のリビングへと行くと、家族に声を掛けられた。
「今日は2回も階段往復するなんて洗濯物多かったんだね」
不思議に思った私には構わず家族はこう続けた。
「だってさっきタッタッタッタって、階段を登って行く軽い足音がしたから、てっきりそうなんだと思って……」
「私は1往復しかしてないけど……」
じゃあアレはなんだったのか、という話になったがすぐに結論が出た。
あの音は多分亡くなった母の足音だったのだろうと。
49日も済んでいないのでまだこの世にいるのだろうということで話は終わった。
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