不思議な雨傘

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不思議な雨傘

 私が社会人になって初めてかった傘は少々変わった傘だった。 友人と一緒に行った渋谷でかったその傘。 白地に薄い朱色で外国風の風景や人物が描かれたその傘がなんとなくオシャレっぽく感じて買うことにした。  初めてその傘を使ったのは朝から雨の降る日だった。 天気予報では1日雨が止まないと言っていたのに夕方には止んだので帰りは傘をさすことは無かった。 憂鬱な雨が止んで良かったと思うくらいだった。  その後のある日。 天気予報で、『今日は帰宅時間には雨が降るので傘を忘れずに』と言われたので先日買った傘を持って朝出かけた。  しかし、夕方近くになっても全く雨の降る気配はなかった。 結局電車に乗って家に帰り着くまで雨は降らなかった。 その時は長い傘なんて持っていって損したけど、雨が降らなくて良かったと思った。  そしてあの傘を持っていくと雨が降らないということが幾度となく続いた。 傘に何かある訳ではないと思ったが、天気予報でまた午後から雨になるという日に別の傘を持って行くことにした。 するとその日は天気予報が的中し、しっかりと雨に降られてしまった。 これはこの傘に何かあるのかもしれないと思い、天気予報がなんと言おうと雨に降られたくない日はその傘を持って行くことにした。  するとやはり雨が降らないのだ。 私が外にいる時には、という条件付きではあったが。 梅雨時でもその傘を持っていると、自分が外に出る時は雨が降ら無かった。 しかし電車や社内にいるときは雨が降っているので全く雨が降らないという訳ではない。  雨が降ると気圧の影響で憂鬱になるから、外にいる時だけは雨が降らないようにその傘が気を遣ってくれたのか? それともただの偶然なのか。 それにしては偶然が重なりすぎた気がする。 何しろその傘の寿命であった5年くらいはそんな事が続いたのだから。
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