エレベーター

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エレベーター

 それは、ある資格の勉強のために通っていたビルのエレベーターでの出来事だった。  朝9:30に間に合うようにいつものようにエレベーターを待っていた。 比較的小型のそのエレベーターに乗って向かう先は8階。 開始時間ギリギリだと混雑するので少し早めに行くと、その日は他にエレベーターを待つ人が1人もいなかった。 普段なら1人や2人は他の利用者がいるはずなのだがその日は誰もいなかったのだ。  私はいつものようにエントランスを入りエレベーター横のボタンを押そうと思った。 するとそのボタンを押す前にエレベーターの扉が自動ドアのように開いたのだ。 まるで『どうぞお入りください』と言わんばかりのタイミングで。 2基あったエレベーターのうちの1基。 自動ドアに反応されなくて開かなかったことはあったが、勝手にエレベーターの扉が開いたのはその時が初めてだった。 その日は息が白くなるほどの寒い日だったので、私の心の中では怖いというより嬉しさの方が上回っていた。  エレベーターに乗っても特に違和感も感じなかったので行き先ボタンを押してエレベーターの扉を閉めて8階へと向かった。  降りる時に心の中で『ありがとう』と言ってエレベーターを降りた。  その後、そのエレベーターの前に1人になることはなかったので勝手に扉が開くことはなかった。
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