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親切な固定電話
近頃ではスマホやパソコンから注文することが当たり前になったが、これはまだ商品の注文にFAXを使っていた頃の話。
その注文先の会社は簡単なホームページはあるものの、手書きのお礼状を送ってくれる年配の社長さん率いるアットホームな会社だった。
水や野菜を扱う会社で誰がどの野菜を作っているのかという生産者さんの情報もきちんと開示してくれる会社だった。
今ではスーパーでもどこの誰が作ったトマトです、とパッケージに書いてあることが普通になったがあの頃はまだその先駆けだった記憶がある。
「FAXはB5の用紙に注文内容を書いて送って下さい」
事務員のこれまた年配のおじさんに言われて送っていたのはちょっと懐かしい記憶だったりする。
なぜB5なのかというと、A4用紙で送ると受信側では端が切れて一部文字が見えないことがあるからだそうである。
ある時、野菜セットを注文するのでB5用紙に注文内容を書いて、自宅のFAXから送ることにした。
番号を登録するほど注文する頻度が高くなかったのでその都度FAX番号を間違わないように電話のプッシュボタンを押して、ディスプレイで番号が間違っていないか確認してから送信した。
すると送信中のディスプレイに見慣れぬ文字が表示された。
(株)○○商店
確かにこの会社にFAXを送った。
しかしこれまで何回か送った時にもディスプレイにFAX番号が表示されることはあったが、会社名が表示されることなんて一度もなかった。
ましてやこれまでこの電話で、登録もしていないのに名前が表示されるなんてことはある訳がなかったのだ。
そうこうしているうちにB5の注文書は電話を通過し『ピーッ』という音とともに送信完了となった。
狐につままれたような気持ちでいたのだが、その時はあまり深く考えずに次の作業に取り掛かった。
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