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木之本風太−1−
俺の名は木之本風太。25歳。ごく普通の一般人。
普通じゃないことといえば、男でありながら男の恋人がいるということと…
現在進行形で死んでいるということである。
人生の終わりは本当にある日突然だった。
道を歩いていたら、飲酒運転だか何だか知らんが突っ込んできた車に撥ねられてしまったのだ。
強い衝撃と同時に体が宙を舞って、地面に叩きつけられ、自分の周りに血溜まりができていく光景はよく覚えている。
ぁあ、俺死ぬんだなぁ…なんて、やけに冷静に考えながら意識を失った…と、思った次の瞬間には、なぜか俺は自宅にワープしていた。
いつの間にか見慣れたリビングに立っていて、あれ?と思って自分の体を見ると、なんと透けていた。
もしかして俺…幽霊になっちゃった?
なんて思いながら、とりあえず家の中をうろついてみる。
自分の部屋の前に行き扉に手を伸ばしてみると、なんとすり抜けることができた。やっぱり俺は幽霊になっているのか。
そのまま部屋に入ってみる。中の様相はほぼそのままになっていたけれど、小さなテーブルの上には俺の遺影が飾られていて、自分が死んでいるのだということを改めて認識させられた。
あれは多分恋人と旅行に行った時に撮った写真だ。遺影に使われたのかぁ。まぁ良い笑顔だもんな。自分で言うのも難だけど、俺らしい写真だ。
あいつが選んでくれたんだろうか。さすがよくわかってるな。
しかし、俺が死んでからどれぐらい経っているのだろうか。
あいつは…千紘はどうしているんだろう。大丈夫だろうか。
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