天使の幸福論

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***  うちのクラスには二人の美少女がいる。新井琴音(あらいことね)遠藤紗耶(えんどうさや)だ。  彼女たちは入学当初から話題の中心だった。  新井琴音は静かに微笑むクールビューティで、高校生とは思えない妖艶さで目が離せなくなる。  遠藤紗耶はほんわかとした優しい笑顔の持ち主で、そこに居るだけでその場全体が明るさを増した。  二人が持つ種類の違う美しさは学校中の男子を余すことなく虜にし、全校を新井派と遠藤派に二分してしまった。  ちなみに俺は遠藤派だ。話したことはないが、彼女を見ているだけで心が温まり幸せな気持ちになった。  しかしその幸せは一通のメールで瓦解する。 『今日の十九時、遠藤紗耶が部室棟の屋上から飛び降りる。助けて』  二十分前、そんな文面が俺のスマホに届いた。  差出人は新井琴音。  新井とは同じ委員会に所属しており、業務連絡用にアドレスを交換していた。  何だよそれ、と返信する余裕はなかった。  俺の家から学校まで走って十五分。屋上となるとさらに階段を四階分上らなければいけない。時間がない。  俺はすぐに家を飛び出した。ガセならそれでいい。  けど、これが本当だったら俺は一生後悔する。
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