1人が本棚に入れています
本棚に追加
1
雲の上は晴れてるってほんとだったんだな。
ごくごく当たり前で知ってたことだけど、実際に目で見るとちょっと感動する。綺麗な快晴が広がってて、下に広がってる雲。雲が下にあるなんて日常にはない風景だ。初めて飛行機に乗った俺は、その光景をずっと見つめてる。
「いい加減にして頂けませんか。もうありません」
頭の後ろから聞こえる、めちゃくちゃ抑えてるけど激怒してるのがモロにわかるスチュワーデスさんの声。
「いやいやいやー、もうちょい、ね? もう一杯だけ」
そして俺の隣から聞こえるパーフェクトな酔っ払いがゴネる声。
俺は何とか他人のフリをしたい。
「本当にありません」
「そんなそんな」
「お静かにお願いします。他のお客様のご迷惑です」
ああ……他人のフリをしていたいけど、そうもいかないか。
大きくため息をついて、隣の正人さんの肩を叩く。
「マジでいい加減にしてください」
「お前も呑め呑め」
居酒屋じゃねぇんですよ。俺がいくら酒呑みだからって、その辺は弁えてる。それなのにこの人と来たら、搭乗前から延々と呑み続けてて、ただいま見事な大トラとなっており、とりあえず俺は恥ずかしすぎて別れたい。
最初のコメントを投稿しよう!