週末

1/4
前へ
/22ページ
次へ

週末

 たった数日のうちに起こった目まぐるしい感情の起伏は、私をベッドに縛り付けるに十分だった。  近所の公園で駆け回る子どもの笑い声が、セミの鳴き声に溶けていく。足に当たる扇風機の風が心地いい。  そうやって土曜日をなんの生産性もなく過ごしていたら、日曜の昼には母からお叱りを受けてしまった。 「ずっと部屋に籠ってるつもり? 電気代誰が払ってると思ってんのよ。ちょっとくらい太陽の光浴びてきなさい!」  そうだ、母の思い描く青春は、光り輝く太陽の下で汗を流す少年少女なのだ。誰がどの席に座るかで精神をピリつかせる私は、青春からかけ離れた存在なんだ。  千円札を握らされ「帰りに珈琲ゼリー買ってきて」とお遣いを押し付けられてしまう。仕方なく外へ出ると、眩しさで瞳の奥がずくっと傷んだ。  スマホの通知を確認する。綾香がチェロのグループトークに姫野を追加していた。彼女が入室すると、みんなが可愛らしいスタンプやらで迎え入れる。  さすがに反応をしなければ空気を悪くすると思って、私も当たり障りのないスタンプを一つ押しておいた。  悠人からの連絡は既読無視をしている。 『一人で抱え込まないで』  ここで素直に打ち明けられる子が、可愛いって言われるんだろう。私はいつだって悠人の優しさを拒んで、それで勝手に傷ついているんだ。    
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加