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週末
たった数日のうちに起こった目まぐるしい感情の起伏は、私をベッドに縛り付けるに十分だった。
近所の公園で駆け回る子どもの笑い声が、セミの鳴き声に溶けていく。足に当たる扇風機の風が心地いい。
そうやって土曜日をなんの生産性もなく過ごしていたら、日曜の昼には母からお叱りを受けてしまった。
「ずっと部屋に籠ってるつもり? 電気代誰が払ってると思ってんのよ。ちょっとくらい太陽の光浴びてきなさい!」
そうだ、母の思い描く青春は、光り輝く太陽の下で汗を流す少年少女なのだ。誰がどの席に座るかで精神をピリつかせる私は、青春からかけ離れた存在なんだ。
千円札を握らされ「帰りに珈琲ゼリー買ってきて」とお遣いを押し付けられてしまう。仕方なく外へ出ると、眩しさで瞳の奥がずくっと傷んだ。
スマホの通知を確認する。綾香がチェロのグループトークに姫野を追加していた。彼女が入室すると、みんなが可愛らしいスタンプやらで迎え入れる。
さすがに反応をしなければ空気を悪くすると思って、私も当たり障りのないスタンプを一つ押しておいた。
悠人からの連絡は既読無視をしている。
『一人で抱え込まないで』
ここで素直に打ち明けられる子が、可愛いって言われるんだろう。私はいつだって悠人の優しさを拒んで、それで勝手に傷ついているんだ。
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