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『先生、前ページまでの小説はいかがでしたでしょうか。
こちらの事情により、原稿用紙に書くことができず、手紙の一部として書かせていただきました。
この小説は前編であり、後編はまた後日投函させていただきます。
そちらもご一読頂けると幸いです。
先日、とある文学賞を受賞することができました。
受賞した作品の一部に、先生に授業で教えていただいた知識が使われております。
また、授業以外でもよく世話していただき、とても感謝しています。
その経験は、全て私の作品に生かされております。
本日はお礼と近況報告をお伝えしたく、手紙と作品を送らせていただきました。
敬具
19期卒業生 天野希子』
最後まで読んで、俺は思い出した。
あぁ、そうだった。
あれは8年前だ。
当時、図書委員の顧問だった俺は図書室で毎日作業していた。
そして、俺の担当クラスの天野が毎日図書室で何かを熱心に書いている姿を見て、ある日声をかけたんだった。
「天野、毎日頑張っているな! いったい何を書いているんだ?」
「小説です。先生には見せてあげません」
「気になるじゃないか」
「まだ練習中なのでだめです」
「練習はいつ終わるんだ? 先生は天野の作品早く読みたいんだが」
「じゃあ、私が何か賞を取れるぐらいになったら読んでもいいですよ。その時は先生のために新作を書きますよ」
「本当か! 天野は勤勉だから、きっとすぐ賞が穫れるぞ!」
「ふふ、そう上手くいきませんよ。その頃には先生もこの約束を忘れているんじゃないですか?」
「いや、きっと思い出すぞ!」
「一度は忘れるんですね。まぁ、いいですよ。その時は、先生が驚くような作品を作りますからね」
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