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謎の竹林
優しい日差しがさす、竹林の中。
田舎道のような土道だけが引いてあり、それ以外は竹、竹、竹……
とりあえず私はその道を進んでいる。
周りにはやたらと動物たちがチョロチョロと動き回っていて、
その動きが目につくのは何故なのか……
そう思っていると、一匹のキツネが急に前方に現れて、口を開いた。
「こんちは」
えっ、なんか挨拶された。
するとそこから堰を切ったように 周りの動物たちが日本語を話しだす。
すごい、なんかいっぱい言ってる。と思いながら道をひたすら進む。
進みながら、あーこの動物たちは最初の一言だけ日本語で話せるんだ と理解した。
夢でよくある突然の世界観理解。謎だ。
動物たちの鳴き声を聞き流しながら歩いていると、ボロボロの古民家を見つける。
ボロボロだけど結構立派で、横にも縦にもデカい。
柱もわりとしっかりしていて、どこか安心できる佇まいだ。
ちょっと興味が湧いたので入ってみることにした。
ところどころ壁が剥がれて外の光が漏れている。天井が高くて、学校の体育館の
ように半2階みたいなの(キャットウォークって言うらしいです)があり、
まるで蔵か倉庫のよう。室内にも苔や草が生えているが、マイナスイオン的な
ものが飛んでいるのか悪くない雰囲気だ。面白い。
半2階に上がってみると、壁が時々崩れていて外が見えるようになっている。
相変わらず 動物たちがヒョコヒョコと動き回っているようだ。なんだか
モグラたたきのようにも見える。どんな動物がいるのだろうとしばらく
眺めていると、自分が今まで歩いてきた道を走ってくる大きな影を発見した。
あれは……熊……でかい熊がこっちに来る!?
近づくにつれハッキリとする熊の全貌。それは白黒の毛がまだらに混ざった、
銀色に見える5m近くの大熊だった。それを見た途端私は恐怖を感じ、
物陰に隠れる。さっきまでそこらを飛び回っていた動物たちも今はいない。
熊は真っ直ぐにこちらにやってきて、突然この古民家を破壊し始めた!
建物がグラグラと揺れる、分厚い壁が粉砕されていく。
暴れまわる熊……それを見て、私は急にとあることを思い出した。
『私はこの熊を知っている……!』
何だったか、きっと私は知っている。確実に知っている。
この熊を、この熊の名前を。
すぐそこに熊の手が振り下ろされる。壁のガレキが、木片が飛び散る。
思い出せる、あともう少しで思い出せるんだ。
熊の目が光る。腹の底からの 鳴き声が轟く。
あの大熊の、名前は―――――……
「ホンドグマ」
ホンドグマ。
そう、ホンドグマだ。
銀毛の大熊が、棒立ちで ホンドグマと名乗った。
ヤツの名前は……ホンドグマだった……
そうして目が覚めたのであった。
銀毛の熊も、ホンドグマという名前も、実際には存在しなかった。
夢の中であるとはいえ、何故私はこの熊のことを知っていたのだろう……
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