Ⅰ.27歳、最後の5分

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Ⅰ.27歳、最後の5分

 ――時計はチクタク進んでいく。  とか言いつつ、うちにはデジタル時計以外存在しないのだから、実際にはそんな音は響いていない。ただの比喩表現でしかない。  でもそんな音が脳内で響いてきそうな程、その刻一刻を意識してしまう状況というものがある。  そう。  私は後5分ほどで誕生日を迎えるのだ。この3月5日で28歳になる。  何というか、28歳の女という響きに私はビビっている。すごく「油の乗った出来る女の年齢」という感じがしてしまうのだ。  今までの27歳って何か「許される若手感」があるのだけれど、28歳ってもうなんか独り立ちしてます感がすごい。あくまでも「私調べ」による偏見でしかないのだが。  ……というか、去年もこれ考えていた気がする。  27歳と26歳って何か印象が違うって。いやいやその前年も、25歳と26歳って全然違うとか言っていた。  結局は毎年思うのだろう、きっと来年も。  いや……来年や再来年は本当に違ってきそうだ。29歳とか30歳はちょっと重みがある。そう考えれば、まだそこまで1年の猶予がある28歳なんて言うのは可愛いものかも知れない。  ……そんなことを考えていたら、27歳も残り1分ですよ。  さようなら私の27歳。アンタ、あんまり良いことなかったね。28歳の私はそのバトンをしっかりと受け継いで頑張るからさ。見ててよ。
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