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Ⅱ.ゼロ・オクロック
ベッド脇で横長のデジタル時計の表示が大きく変化した気がした。それを視界の端っこで感じ取った時、私は28歳になったのだと悟った。
改めて表示に目を遣る。案の定「00:00」が映し出されていた。
――と思った途端、私のスマホは忙しそうに通知音を鳴らし始める。
別に驚くことじゃない。毎年の恒例行事みたいなものだ。
『マオ、おたおめー』
『早生まれずるいぞ、ようこそ28歳の世界へ』
こんな感じのLINEが次々と入ってきた。大学時代の友人グループ内の暗黙のルールで、とにかく誕生日へのレスポンスが早い。
私も友人の誕生日の時にはそうだが、もう数分前からメッセージをセットして構えている状態だ。そして日が変わったと見るや即送信。こんな感じのやりとりを、もう何年続けているやら。
大学時代の友人以外でも律儀に誕生日メッセージを送ってくれている友達がいた。ありがたい限りだ。中には既に子供がいるママもいるというのに、私なんかに構ってくれて。
そんな友人たちに、それぞれに合わせた返信をしていると、私の誕生日はあっという間に1時間が経過しようとしていた。
新たにメッセージがないかと確認してみたが、それ以上はなかった。
……つまり、だ。
私が本当に「お誕生日おめでとう」を言ってほしい相手、同期のアイツからは、今のところ何のメッセージも届いていない。
最近、結構良い感じだったと思ったんだけどな……。
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