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Ⅲ.同期のアイツ
翌朝。
目が覚めてスマホに目を落とすと、新たに誕生日メッセージが数件届いていた。だけど、同期のアイツからは何の連絡もない。
私は枕にスマホを投げつけて、朝の身支度を始めた。
――職場に着いてからも、仲の良い同僚からは「マオちゃんおめでとう」とか「竹内さんお誕生日ですよね!」とか声を掛けられた。
だけど、同期のアイツからは何の連絡もない。
スマホにもない、会社メールにもない、声掛けもない。
ないないばっかで、あるのは違和感のみの状態だった。
……おっかしいなあ。
最近週イチくらいで2人でご飯行ったり、誕生日の話なんかもしたことあると思うんだけれど。
こっち的にはもう付き合うの秒読みかな的な雰囲気を感じていたんだけれど。これって私の独り相撲だったのだろうか。
あ、もしかしてアイツ今日休みだったりする?
体調不良でスマホを持ち上げる筋力もない的な。
丁度その時、目の前にアイツと同じ営業の後輩くんが通った。私は反射的に声を発する。
「あのさ、今日って西本のやつ出社してた?」
「竹内さんどうも! アキトさんですか? 今日は社内にいましたよ」
「そう……なんだ。ありがと」
「何か用なら伝えときましょうか?」
「いやいや大丈夫、大したことじゃないから」
いや大したことだけどね! 私の中では!
病欠という望みが絶たれた今、私の中の違和感は膨らむばかりだ。
同期にして今良い雰囲気だと私が自負する相手・西本アキト。
入社してすぐの研修では顔を合わせていたけど、私は経理でアイツは営業に配属されて、ほとんど絡みはなかった。
それが去年、私が総務に異動になったことで業務的に顔を合わせることが多くなり、次第に飲みに行ったりする関係に。
ここ最近は、2人きりで会うようにもなり始めていた。
何気ない会話の中で、絶対に誕生日の話だってしていたはずだ。
それなのに。それなのに。うう。
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