Ⅴ.ドキドキと期待外れ

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Ⅴ.ドキドキと期待外れ

 私は本来であれば、定時ダッシュをしてはいけないような進捗状況だったが、アイツとの約束のために18時に仕事を終えて急ぎエントランスホールへと下りた。  そこには既にアイツの姿があった。私を探しているのだろうか、だいぶキョロキョロしながら立っている。  スラッとした体型でスーツ姿がよく似合う。すごくカッコいいという訳ではないんだけれど、キリッとした目が笑ったときに糸みたいになるところは、私のストライクゾーンを的確に射抜いてくる。  エスカレータを下りてくる私を見つけた西本は、またその笑顔で私の心臓を1.5倍速くらいに高鳴らせるのだ。 「竹内ーー!」 「西本、お疲れ」 「お疲れ! じゃ駐車場行くぞ! 今日は俺、車なんだよ」 「そうなんだ……って、それじゃ飲めないじゃん」 「飲まないぞ! 今日は美味しい魚を食べに行くんだ!」 「あ……そうですか」  車っていうのはちょっとドキッとしたけど……。  お酒なしっていうのは期待外れだったりして。いいんだけど。  私達は、会社裏の駐車場から車に乗り、西本が予約したという「海鮮のお店」へと向かって行った。  はい、ここまで誕生日の話題なし。
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