1・出逢い

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1・出逢い

 ヤバい。  昨日の夜に来た生理のせいで朝からだるくて起きられなかった。おまけに完全に血が足りないのを感じる。朝食を抜いたこともあって、さらに頭がクラクラする。駅までのダッシュなんてしてはいけない体だった。  分かってはいたけど、急がないと遅刻してしまう。  あたしは全速力で電車に駆け込んだ。  同時に閉まるドア。  フラリ、一瞬意識が遠のいた気がした。  反射的に手すりに縋って倒れるのを阻止した。しかし、このままの状態でこの揺れに耐えられるだろうか。  すでに目の前が真っ暗になりかけている。  息も上がって、苦しい。  ダメだ、降りよう。  数分の揺れにも限界を感じて、開いた扉からふらふらと降りると、すぐに見つけた椅子に全身を預けるように座った。  なにも飲んでこなかったから、喉も上がった息のせいで余計にカラカラだ。  もう少し落ち着いたら、水でも買ってこよう。  やっと思考が働くようになった頭で考えていると、目の前にペットボトルの水が差し出された。 「大丈夫? これ、良かったら飲んで」  頭上からの優しく心配する声に、あたしの視界が一気に明るくなった。  差し出されたペットボトルを震える手で受け取ると、額に当てた。  冷たくて気持ちいい。 「開けれる? 貸して」  下ろしたペットボトルを、その人は隣の椅子に座ると開けてくれる。 「あ、ありがとう、ございます」  ようやくその人のことをちゃんと見ることが出来た。
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