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急いで校門を出ようとした瞬間に「のん!」と呼び止められて、あたしは足を止めた。
振り返ると、校門前に晃の姿。
「あ、あれ? 駅で待ち合わせだったよね?」
確かにさっき、メッセージであたしは〝駅で待ち合わせしよう〟って送ったはず。
「えと、早くのんに会いたくて。ここまで来ちゃった」
照れている晃に、久しぶりに会うからと急いではいたけど、気持ちはそこまで上がっていなかったことにあたしは胸が痛む。
「あ、そー……なんだ……」
「歩こっか」
「……うん」
隣を歩く晃は、あたしの歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれる。
「最近忙しいの?」
「え、あー、そうだね。部活の大会があったりしたし、麻由理達と遊んだりしてるし、学校もテストがあったりで」
「そっか、それなら良いんだけどさ。全然連絡ないし、他に好きなやつでも出来たのかと思って心配しちゃったよ」
晃はそう言ってさりげなく手を繋いでくる。嫌ではないけれど、それが特別嬉しいわけでもなくて。だけど、晃の優しさは伝わってくるし、好きって気持ちも伝わってくる気がする。
「ああー、俺ものんと同じ学校に通いたかったー!」
急に叫ぶ晃にあたしは驚いて周りを伺った。振り返って怪訝な顔をされているようで焦ってしまう。
「ちょ、声でかくない?!」
「だってさ、同じ学校だったらずっと一緒にいれるじゃん。話も出来るし、いつでも手も繋げるし、連絡取らなくてもそばに居られるのに。俺転校しよっかなぁ」
「……え?!」
「嘘だよ。ってか、今マジで嫌な顔しなかった?」
「し、してないよ!」
「ほんとかよー。ショックなんだけどー」
表情に悲しさが溢れたかと思えば、優しく微笑んでくれる。
晃と話しているのは楽しい。この楽しさだけじゃダメなのかな?
手を繋いだり、キスをしたり、抱き合ったり、しなきゃダメなのかな?
彼氏彼女って、そういうもの?
そんなのなくても、晃とは仲良くしていたい。
「会えて良かった。やっぱり俺、のんが好きだわ。最近全然連絡ないから、茜にまで連絡しちゃってた……でも、今日会ってくれたし嬉しかった。今度休みが合ったら、どっか遊び行こうよ」
「……うん」
頷いてみるけど、すぐに予定を立てたいほどに嬉しいわけじゃなかった。
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