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同級生の目があっても、翔琉はいつもこんな感じ、
私は抵抗もせず、されるがまま彼についていくだけだった。
今までは、それが堪らなく嬉しくて疑いもしなかった、
少し強引なところがあるけれど、私が本当に嫌がる事は決してしないし、その後の優しさの方が勝っていつも忘れてしまう。
学校を出て、橋を渡り通学路の途中にある河川敷までくると、翔琉はやっと私の腕を離した。
「もうー痛い! かよわい女の子なんだからねー、もっと大切にしてよ!、ちから強すぎだって……」
解放された腕をさすりながら翔琉を睨みつけた。
モテるくせに翔琉は女の子には不器用だ、優しすぎる反面気持ちが空回りする事も多い。
機嫌を損ねたと思ったのか、翔琉は申し訳なさそうに私の腕を揉み始めた、
「あっ、こそばゆいって! やめてよ、もう怒ってないからー」
「結衣、俺の横に座って」
はいはい、いーですよ、なんなりと、
堤防の土手の枯れた芝生に寝転んで、真っ赤に染まる大きな夕陽を全身に浴びた、ほのかな草いきれが鼻をくすぐり、懐かしさを呼び寄せる。
そう、二人の思い出の場所だった、、
「わぁー、大っきいねー、久しぶりに此処で見た」
遥か遠く山の影に落ちかけた夕陽が、山の稜線に帽子のようにかかる雲をオレンジ色に染めている。
「ねぇ翔琉、なんで夕陽は大きく見えるの?」
「昔は大気の屈折とか、赤色は波長が長いからとか言われてたけど、今は目の錯覚が有力らしいよ」
「うそだー、目の錯覚なの⁉︎ そんなはずないよ、本当に大っきく見えるもん」
「これだっていう答えは今でも示されていないよ」
翔琉はなんでも知っている、こんな雑学問題なんて朝飯前だ。
私に関するどうでもいい事も、英単語を覚えるように記憶していて、
たまに私よりも私の事を知ってるんじゃないかって、不安になることがある。
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