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劣等感は高校生になっても消えないでいた、
チビで童顔な私は、恋愛とは無縁の中学時代を過ごしてきたからだ。
「ここに一人いるだろう」
「変な趣味! 翔琉は美意識がズレてるよ」
心にも無く捻くれた言い方をしてしまう、翔琉の言葉を素直に受け取ることができない、
最近はそんな自分が嫌いになりかけていた。
あッ‼︎
突然振り上げられた手に目を瞑り顔をしかめた、叩かれると思ったその直後、掌の代わりに力強い腕が私の躰を抱きしめていた。
翔琉が女の子に手を挙げることなんてない……か、
今までもなかったし、きっとこれからも。
私を抱きしめる時の力加減は申し分ないと思う、強すぎず弱すぎず、いつまでもこうしていたいと思わせるほど優しい。
「結衣、俺が嫌いになったのか?」
耳元に囁やく哀しげな声音、胸の中で小さく首を振って否定しながらも自然と涙が溢れた、、
こんなに愛してくれる彼を、私はどうして受け止めてあげる事ができないのだろうか、私だって彼が大好きだ、ずっと一緒にいたいと思っている。
でも……
やっぱり理由なんてない、、彼との未来が私には描けないだけだ。
それが彼のせいじゃないことも知っている、
何かが足りない……それが何かもわからない、
「私がくっついていたら翔琉は告白もされないでしょ……」
しゃくりあげながら泣いた、
彼は戸惑いながらも、抱きしめた腕をいつまでも離さなかった……。
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