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彼との出会いは二年前、高校一年生の時だった、
「進藤くん、今日の予定は?」
「別になにもないよ、誰にも誘われてないし、真っ直ぐ家に帰るだけかな」
「どっか、寄り道しようよ」
「ずるーい、今日は私の番でしょ!」
進藤 翔琉、彼の周りにはいつも女の子の取り巻きがいた、
成績優秀、運動神経抜群、そのくせ彼は運動部どころか部活動に参加していない、帰宅部だ。
そのためか放課後の教室では毎日のように彼の争奪戦が繰り返されていた。
決してお喋り上手じゃないけど人当たりの良さと笑顔を絶やさない明るい雰囲気が女の子を惹きつけて止まない。
そんな黄色い声が飛び交う風景を横目に見ながら、
私はいつもそそくさと帰り支度を済ませ教室を後にする。
私だって決して彼に興味がないわけじゃない、
だけどどう頑張っても私には可能性がないし、彼女達に混じって彼を取り合う勇気も持ち合わせていない。
図書室に寄って借りた本を返し、お気に入りの浅田次郎先生の本を借りた、
先生の決してハッピーエンドにならない切ない物語が私は大好きだ。
ランニング中のテニス部の部員とすれ違いながら、いてもしょうがない学校を後にして真っ直ぐ家路を急いだ、
一級河川の橋を渡り堤防の上を北に向かう、橋からそのまま真っ直ぐ坂を降りて半分くらいシャッターを下ろしてしまった商店街を抜けた方が近道だけど、車両侵入禁止になっているため犬の散歩やジョギングをする人がいるだけで、周りを気にせずマイペースで歩くことができるこの堤防の方が私は好きだった。
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