椅子の聖母の最後の願い

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 そうして、俺たちは『友達』というものになった。  電話だけの細いつながりだが、俺には特別なもの。  ふいに彼女がこんなことを聞いてきたことがあった。 『3つのお願いごとを叶える妖精がいたらあなたはどうする?』 「頭がいいのに、子供みたいなこと考えるんだな」 『一応、女の子だからね。私だったらこの変な脳みそを普通にしてもらって。この病気を治してもらう。それだけで十分。最後の願いはあなたにあげる。人間よくばってはダメだわ』 「欲がないな。でも、ありがたく受け取っておこう」 『あなたのお願いは?』 「そうだな……。お前に幸せになってほしい」  あまりにも柄にもないことを言ったことに気付き思わず赤面した。  しかし、それは心からの願いだった。 『だったら、簡単よ。依頼を終わらせて。そうすれば私は満足よ』  満足と幸せは同義語だろうか?  どちらも味わったことのない俺にはよくわからなかった。
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