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数か月などあっという間に過ぎた。
彼女と話をすることは、失われた過去を取り戻せるようで心が満たされた。
だから、別れが突然に思えた。
彼女の病状は確実に進行し、ついに昏睡状態となった。
覚悟を決めなければならない。
この機会を逃しては、連れて行かれてしまう。
彼女が望まぬところに、望まぬ形で……。
彼女の願いを叶えことができるのは、俺しかいない。
それがうれしくもあり、悲しかった。
夕闇の中、一発の銃弾に想いを込める。
――― どうか、彼女が天国で幸せになれますように……。
小さな銃声とともに、命の手ごたえを感じる。
彼女の最後の願いと俺のひとつの願いは叶ったんだ。
そうだろう?
少なくとも、今はそう思いたい。
銃を下し、堪え切れずに天を仰ぐと、星がにじんで見えた。
E N D
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