1人が本棚に入れています
本棚に追加
アイドル復活
レイラは月の上でパフォーマンスしていた場所へ戻っていた。
「お嬢様、御無事に戻ってきてくれて嬉しいです……。」
富が言った。
「あれ?富って……ひぃおばあちゃん?」
レイラの姿はきらびやかなアイドルなのに、中身は地味。幸せな子育てを終えたおばあちゃんの記憶が残っていた。戸惑うレイラだがここは宇宙。さらにレイラを支えていた宇宙プロジェクト兼事務所の社長さんは、なんと彼にそっくりだった。
「この世界は何?どうなっているの?」
不思議でしょうがなかった。
過去と未来。
それだけではなく並行に動いている世界。そして、海底と空高い宇宙。全てが繋がっているように思う。しかし、みんなはそれに気がつかず生きているようだった。レイラだけがうっすらと記憶が残っていた。
「彼は私の運命の人……」
それだけははっきりと覚えていた。
宇宙オリンピックは戻ってくる前の盛り上がりでレイラが初の金メダルを獲得。レイラは自分がアイドルだと周りを見て気付き、
「みんな、ありがとう!」
と、両手を振って声援に応えた。
「何?この感覚……すごく気持ちがいい!」
すると、ひぃおばあちゃんにそっくりな富が言った。
「お嬢様、もっと幸せになってください。自信を持ってと約束したはずですよ。あとは『愛』を手に入れてくださいね。」
「えっ?富、なんでその事を……全て知ってる?」
この世界には私達の最愛の娘の栞はいなかった。まだ、本当の愛を手に入れていないみたいだ。富ならなんでも話せる気がする。しかし、そう簡単にはいかなかった。
富は、この宇宙空間で呼吸困難となり、星になってしまった。
「富~~~~~~~~~~~~~~‼」
声を震わせて、いくつもの星が振動するくらいレイラは叫んで泣いた。
一緒に楽しく仕事をし、プライベートでも一緒に運動をしてきたこと、そして富の言葉や優しさを思い出した。しかし、結局何も出来なかった。
「ありがとう。」
そう言って、別れるしかなかった。
ひとつの星がピカッと光り、私の前で止まった。
それは赤い「スピネル」という宝石。
この赤い宝石……それは別の世界で彼から貰ったペンダントに付いていたのと同じで懐かしい気持ちになった。
その光は不思議な光で、私のハートの中にスーッと入っていった。すごく胸が熱くてポカポカする。
「どうした?」
「シュ……いや、社長……。」
この出来事がきっかけで、シュウトにそっくりな社長と急接近する事となった。金銭面は勿論の事、お金では買えない精神面のサポートや信頼。なんでも私を支えてくれた。周囲から反対されたり批判されたりしても、レイラのファンが私たちを支えて助けてくれたからだ。
そして、私たちは遂に本当の愛を手に入れる事が出来た。
最初のコメントを投稿しよう!