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社長のタイムスリップ
愛を手に入れたレイラだったが、また自分が別の世界へ転生してしまうのではないかという不安を常に思っていた。
すると、今度はシュウトに似た社長の身に何かおかしな出来事が起きていた。
――ある朝――
「もう、この地球は感染症に侵されています……」
テレビの音声からかすかに聞こえるアナウンサーの声。
「そんな事言われたってどうすればいいんだよ……」
社長は小さな声で乱暴な文句を言いながら、ドラム式洗濯機の扉を開ける。強く開けてしまい、壁に「ゴン!」とぶつけてしまった。
「あーーーーー‼奮発して買ったばかりのドラム式洗濯機が……」
社長なのに日常の事は苦手。しかし、そんなことは言ってられない。いつも通り動いてもらわなければ着るものがない。
「俺の履くパンツがなくなってしまう。それはヤバいだろ‼」
そんな事を思い、洗濯と乾燥のスイッチを入れて自分の髪型に時間を掛ける。一応、これでも社長……。
すると、買ったばかりのドラム式がガタガタと音をならし、飛行機のような音を出した。
なんと、自分の体が離陸し、社長が一瞬で消えてしまった。
「ここ何処⁉」
すると、誰もいない小学校の図書館の中にいて、社長は一人ポツンと小学生の姿に戻り、椅子に座っていた。
そして一冊の本を読んでいた。
タイトルはない。
誰かの家の中を歩いている内容なのだが、彼は行ったことがある感覚を覚えていた。
「なんか不思議な本だなぁ。」
するとチャイムが鳴った。
キ――ン コ――ン カ――ン コ――ン♪
次は給食の時間らしい。みんながざわざわしている。
廊下に出てみると張り紙が貼られていた。
――のど自慢のお知らせ――
「僕、出場してみたいかも!」
小さな社長はカラオケも行ったことないのに凄い度胸があった。帰宅し、テレビから流れてきた曲……歌いたい曲名は『会いたい』。
この日からアカペラで歌を歌って練習が始まる。しかし、サビでなかなか声が出ない……。とうとう締め切りの日になってしまい、結局出場を諦めてしまった。
「僕の声はどうして出ないんだ……」
その悔しさがいつしか読書へと強く向かっていったのだった。本を読む事で、日常を忘れることが出来るから手放せなかった。そして声なんかいらなくなっていた。
「心で会話するから声は必要ない。」
そんなことを思いながら、日々読書の時間を作っていた。
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