1人が本棚に入れています
本棚に追加
昔の社長
社長は一人で図書館へ通う生活が続き無口な性格になった。朝からほとんど誰とも会話をせずにひたすら本を読む日々。
そしてコンピューターやミュージックプレイヤーをいじり、音楽と文学の道に進んでいく。
必要のないことは決して話さなかった。
だからみんなから秘密を聞かされたり頼まれたり、信頼される人へと成長していった。
そんなある日、踏み切りで足が引っ掛かって歩けないおばあちゃんがいた。若き日の社長は音楽を聴いていたが、踏み切りの赤い警報が光っていることに気が付き、同時におばあちゃんの危険を感じて急いでおばあちゃんを助けにダッシュで走った。左からはいつものスピードで列車が走ってくる。聴いていたイヤホンやミュージックプレイヤーが落ちて壊れているのが分かったがそんなの気にせず必死に向かって走った。そしておばあちゃんをギリギリで助けることが出来た。
「あ~、もう私は死を覚悟していたところを助けていただき、感謝しきれないわねぇ。」
そしておばあちゃんが僕の足元を見ていった。
「あなた、靴は?」
辺りを見渡すと片方の靴が電車にひかれて潰れていた。すると、おばあちゃんが言った。
「家族に連絡してもらえないかねぇ。」
「いいですよ。」
社長は久々に声を発した。暫くして、おばあちゃんを迎えにきた娘らしき人が来た。
「おばあちゃ~ん、何やってんの~!心配したんだから……」
そして、僕を見て言った。
「おばあちゃんを助けてくれてありがとうございます。」
この時には気が付かなかったが、女性はどことなくレイラにそっくりだった。
「なんかどこかで見たことあるような……。」
ずっと頭の中で会った記憶を引き出そうとしていた。そして、今度は右から列車が走ってくる。踏み切りは閉まったまま。列車のスピードが新幹線並みになっている。
「ビューーー‼」
列車がものすごいスピードで通りすぎた。
風と共に社長とおばあちゃんと娘さんの3人が一瞬でどこかへ飛ばされた。まるで瞬間移動のように……。すると、昔懐かしい海の浜辺におばあちゃんと僕、レイラと栞の4人が立っていた。
そしてなんと、そのおばあちゃんはマネージャー兼スーパーおばあちゃんの富だった!!
最初のコメントを投稿しよう!