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別世界へ転生
ある朝、私レイラはいつものように朝起きてボーッとしながらテレビをつけた。どこのチャンネルも嫌なニュースばかりでうんざり。
「なんか楽しい話題はないのかな……」
目が覚めたばかりなのに、口癖のように言っていた。
恋愛結婚をして、結婚式も盛大に挙げた。すぐに同棲生活が始まり、愛のある暮らしを夢見ていた。
しかし、何かが足りないことに気づいてしまった……それは結婚することで手に入れられるはずの愛だった。子供が出来た途端、ほとんど一人で子育てをしていく日々。旦那の職業柄、大震災が起きても家庭より市民を守らなければならない為、私はいつも子供達を抱き抱えて逃げる。いざという時に旦那の姿はない。それは、震災以外でも起きていた。
子供が熱を出して苦しんでいるときも、会社の旅行だと言い年に1回は旅行へも行くようになった。それもすぐに帰ってこられない遠出。愛のない人生を送っていく日々が過ぎていき、段々自分が惨めに思えてきた。
こんな生活に、私はもう限界が近づいていたのかもしれない。
とにかく私は自分のしたい事を我慢したり耐えたり、私が努力すれば解決するものだと思っていた。子供を育てるには結局お金が必要で、そのために旦那を頼っていた。毎日同じ事の繰り返し……苦しかった。そして社会から遠退いていき、気が付けば私はひとりぼっちの大人になっていた。みんなも自分の事で精一杯。誰も気づかないし助けてくれない……。愛を感じないこの家の中で、私は生ける屍だった。たまにしか連絡のないスマートフォンなんて、必要ないと思い始めていた。
「あいつ、女捨ててねぇ?」
通りすがりに聞こえた言葉。どんなに惨めな姿に見えたのだろう。
風船が割れたような衝撃だった。
「人生は一度きり。後悔したくないから誰かに言葉で伝えたい、残したい……。」
涙を流しながらテレビをラジオのように聞き流しながら今日も家事をこなしていた。すると、小説を書く事が今流行っていると話題になっていた。本などあまり読まないし、小説なんて書いたことがなかったのに家事の手を止めて普段使いこなせていないスマートフォンを夢中に操作した。今、流行のことをしてみたかった。現実から逃げたかったのかもしれない。
「夢が見たい、あと少しだけでいいから……」
今までの楽しかった事、辛かった事、全てを言葉にぶつけてみた子育てもほとんど一段落した今、ストレス発散になり新たな人生が始まったようだった。
それはこれからの素敵な人生へのパスポートのようだった……。
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