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別世界での私
小説の中では自分を自由に表現でき、それは今まで現実ではなかなか出来なかった事を表現させることが可能だった。行きたい所にも行けるし、やりたいことも出来る。小説を書くことで、のびのびと生きていきたいと前向きになれた。嫌なことがあっても自分の好きなように修正させ、素晴らしい世界へと変えられる。そんな日々を過ごす中、私の現実がどんどん変化していった。そして、今になって本を読むようになった。いろんな方の作品を読んでは共感し、時には泣いたり笑ったり……。
喜怒哀楽の感情が久しぶりに戻ってきたのだ。
しかし、小説の中で笑うことが多くなったのに現実では笑えない感情の中で過ごしているのが辛くなっていた。温度差が激しくなっていつも不安になってしまった。
「どちらが本当の自分なのだろう?」
それを考えた時、明らかに小説を書いている自分が本当だと気付いた。臆病な私が恋をしたのは、たぶんこの頃なのかもしれない。
相手は素敵な物語を書く作家の彼シュウト。私たちは本を読んだことがきっかけで運命と呼べる出逢いをした。
これまで沢山の物語を書いてきた。作品に対して色々と話したり、たまに作品から離れて日常会話をしたりと実際には会ったことがないのに本当の私の心を知っていく彼がいた。そんな素敵な毎日が続き、突然彼から重要な伝言が届いた。ずっと気持ちを隠して密かに思っていた彼から初めてのプレゼント。私はゆっくりとその伝言を見た。彼が自分のアドレスを教えてくれたのだった。冗談かと思った。
「ちゃんと送信されてる……本当なんだ!」
いらないと思っていたスマートフォンも今ではなくてはならないアイテムになっていた。こんなに大事な物だったのかと思うくらい、あの日から常に一緒に持ち歩いている。
ずっと一緒に……。
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