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〜CVW社〜
淳一達に拳銃を向けた紗夜。
何かと葛藤しているのが、表情で分かる。
「紗夜、俺だ。負けるな、銃を下ろすんだ❗️」
「暗示…」
真田が呟く。
その時、紗夜の右掌が光り始めた。
銃を持つ左手を掴み、ゆっくりと銃口を下げる。
信じられない情景に、驚く淳一と真田と久宝。
3人はそこに、確かに少女の姿を見た。
紗夜の右手に宿るモノ。
それが、紗夜を救った。
崩れ落ちる紗夜を抱き締める淳一。
部屋へ駆け込む久宝と真田。
沢山のモニターと機器に囲まれたデスク。
そこには、項垂れて気を失った、小笠原梢枝の姿があった。
〜その後〜
気が付いた梢枝の説得により、晴翔は暴走をやめ、警察に逮捕されて裁きを待っている。
余談だが、原田が抜かれることはなかった。
白和泉遼子と梢枝の事故について晴翔は、姉の死による白和泉家への復讐と自供し、小笠原駿壱からの指示は否認した。
それにより、小笠原駿壱の妻梢枝暗殺未遂容疑は消え、梢枝も夫を起訴することはしなかった。
最終的に駿壱は、CVW社のバーチャルクラウドターミナルが招いた、行き過ぎた煽り運転誘発の責任を問われ、新しいメディア規制法により、罰金か懲役2年の刑となり、彼は受刑を選んだ。
Hunterメンバーの爆死については、羽間衣千香を主犯と断定し、指名手配をかけたが、目撃情報はあれど、未だに逮捕には至っていない。
小笠原梢枝の容疑は晴れ、CVW社の社長として、夫の出所を待っている。
彼女が開発した統合型バーチャルシステムは、ICSA Ltd.のセキュリティーシステムと併せて、映画やテレビ、劇場、ゲームなどの分野で、広く活用されている。
また、ラブと眉村首相による、バーチャルクラウドターミナルに関する新法案が可決され、全世界がそれに準じた法案を締結した。
〜数日後〜
警視庁凶悪犯罪対策本部。
「しかし、SNSってのは相変わらずだな。未だに犯罪紛いの動画がフォローされてて、おかしな世の中になっちまったもんだ」
「淳、紗夜の調子はどう?」
富士本の計らいで、暫く休養の彼女を気遣う咲。
「紗夜の話じゃ、小笠原梢枝が自分の意思を失っていたのは、間違いないってことだ。その不可思議な心理を読んだために、自分もそこに引き摺り込まれ、まだその時のショックから抜け出せないみてぇだ」
淳一達に銃口を向けたことは覚えておらず、3人も口には出さなかった。
「狭間衣千香は、いったい何者なんでしょう?」
「大学で小笠原梢枝の後輩だったのは、まちがいないですが、それまでの履歴が全て偽りで、名前さえ、本名か怪しいものです」
あれから彼女を追っている、久宝と真田。
「顔認証、指紋、生体認証、すべて該当者なし。CAPSでも、犯罪者の診断結果は出ません」
ほとんど毎日、泊まりで調査している昴。
「確かに世の中には、正式に届けられていない者も沢山います。しかしそう言う例のほとんどが、貧困層や裏社会でのこと。彼女の場合は、かなりの学歴と知能を有しています」
「逆に、お偉いさんや富豪層が、知られたくない子として育てた可能性もあるぜ」
「後は密入国者…かな」
真田、淳一、桐谷。
どの例にしろ、衣千香はまともではない。
「しかしさぁ…どうして堂々と出口の検問をクリアして、更には知っているとは言え、監視カメラに不適な笑みなんて出来るわけ?」
「小笠原梢枝の状態は、非常に異例なことですが、脳を操られていたとの判断がされました。あの警備員も、同じ様に記憶が消えています」
「羽間衣千香は、催眠術師ってこと?」
「いえ、催眠術では、ある一定のインプットされたことしかできません。梢枝さんの様に、臨機応変に操るのは無理です」
「昴さん、途中までの記録に残っている梢枝はバーチャル映像で、最後に本物に入れ替えたのでは?」
「久宝、お前も何度も観ただろう。監視カメラ映像に梢枝を入れ替える映像はなく、編集の痕跡もねぇ。操られていた…か、自らやっていたかだ」
「では淳一さん、本物はずっとそこにいて、バーチャル映像を重ねていた…なんてのも無理かぁ〜バレますね」
その謎だけが、未だに解明されず、彼女が見つからない理由の様にも思えた。
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