【3】Protection

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〜新宿歌舞伎町〜 クラブ『ビューティーナイト』の前で、偶然会った2人。 「あらま、珍しい。いつもの蔵ちゃんは?」 「神さんに呼ばれて、先に来てるわ」 蔵崎組組長、蔵崎(くらしま) (みつる)。 飛鳥組の傘下で、組の倉庫番である。 ドアを開けると賑やかな声に、圧される2人。 一階は、カウンターに2人とテーブル席に1組。 螺旋階段で繋がる2階フロアは、飛鳥神が仕切る、歓迎パーティで盛り上がっていた。 「いらっしゃ〜い、美夜さん、咲さん」 カウンターの中から笑顔のママ、若槻(わかつき) 麗子(れいこ)が手を振って迎える。 「あれ、あなたは確か…」 「ICSAの荒垣(あらがき) (とおる)です。お久しぶりです咲さん」 ママの前のカウンター席から、軽く会釈する。 麗子の実の息子である。 「思い出したわ。また逮捕して下さい! なんて言うつもりじゃないわよね?」 「アハハ、あれはもう忘れて下さいよ。昴さんから代役を頼まれましてね。多分…咲さんと神さん達じゃ、分からないだろうからって」 「昴のやつ…まぁそうね、気が利くじゃない」 「あれ、怒んないんだ咲(ねぇ)」 「しかし徹。久々なのに、よく見分けたわね」 「あれ?ママも分かって声掛けたんじゃ?」 「………💦」 無言の笑顔で誤魔化す麗子。 鳳来咲と双子の妹、鳳来美夜(みや)。 ミニスカハイヒールも髪の色も長さまで、ついでに言えば、性格に至るまで瓜二つ。 見分けられるものではない。 「これでも心理学と人類学は、博士号持ってますからね。咲さんはまだお仕事モード。バッグじゃなくて鞄を持ってるのは、タブレットPCを持参してるからです。普通ならあり得ません」 International Cloud Security Alliance、略してICSA Ltd. その社長であり、刑事課の犯罪者予知システムCAPS(キャップス)の製作者でもある。 「じゃあ、あたしは遊びモードだって言うの?」 「はい」 「はい…って💦、随分とストレートね」 (しかもママに似て、いい笑顔で💧) 「おっ、美夜ちゃん来たか。早く上がっといで、今から何回目かの乾杯だから」 「蔵ちゃん、キツ〜いのちょうだい」 逃げる様に、ヒールの音が駆け上がって行く。 「おぅ咲、お前もどうだ?」 「神、私はまだ勤務中なのよ。さっさと済ませて、降りて来なさい!」 言うなり荒垣の隣に座り、そこにあったグラスを一気に飲み干した咲。 「咲さんそれ私の…それに勤務中じゃ?」 「大丈夫、ビールじゃ酔わないから」 酔う酔わないとか言う問題ではない💧 「では諸君、浜崎(はまさき) 菊矢(きくや)さんの堅気(かたぎ)への門出を祝って❗️」 「カンパ〜イ🍻!」 盛大な拍手の中で、深々と頭を下げる浜崎。 「金はお前の口座に入っている。マンションは、美夜が見立ててくれてるから、遠慮はいらねぇ。暫くはゆっくり体を慣らすことだ」 「何から何まで、恩にきます」 「とにかく、今夜は飲んで楽しめ。すまねぇが、俺は少し野暮用で下へ行ってくる。怒らせると怖ぇからな」 ポンっと肩を叩いて席を立つ神。 最後の一言で、誰も引き止める者はいない。 タブレットPCを立ち上げ、サイトを開いた咲…ではなくて荒垣。 既に昴もリモート参加していた。 テーブル席の1人を呼ぶ神。 「さて…始めますか」 荒垣の顔から、笑みが消えた。
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