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〜新宿歌舞伎町〜
クラブ『ビューティーナイト』の前で、偶然会った2人。
「あらま、珍しい。いつもの蔵ちゃんは?」
「神さんに呼ばれて、先に来てるわ」
蔵崎組組長、蔵崎 満。
飛鳥組の傘下で、組の倉庫番である。
ドアを開けると賑やかな声に、圧される2人。
一階は、カウンターに2人とテーブル席に1組。
螺旋階段で繋がる2階フロアは、飛鳥神が仕切る、歓迎パーティで盛り上がっていた。
「いらっしゃ〜い、美夜さん、咲さん」
カウンターの中から笑顔のママ、若槻 麗子が手を振って迎える。
「あれ、あなたは確か…」
「ICSAの荒垣 徹です。お久しぶりです咲さん」
ママの前のカウンター席から、軽く会釈する。
麗子の実の息子である。
「思い出したわ。また逮捕して下さい! なんて言うつもりじゃないわよね?」
「アハハ、あれはもう忘れて下さいよ。昴さんから代役を頼まれましてね。多分…咲さんと神さん達じゃ、分からないだろうからって」
「昴のやつ…まぁそうね、気が利くじゃない」
「あれ、怒んないんだ咲姉」
「しかし徹。久々なのに、よく見分けたわね」
「あれ?ママも分かって声掛けたんじゃ?」
「………💦」
無言の笑顔で誤魔化す麗子。
鳳来咲と双子の妹、鳳来美夜。
ミニスカハイヒールも髪の色も長さまで、ついでに言えば、性格に至るまで瓜二つ。
見分けられるものではない。
「これでも心理学と人類学は、博士号持ってますからね。咲さんはまだお仕事モード。バッグじゃなくて鞄を持ってるのは、タブレットPCを持参してるからです。普通ならあり得ません」
International Cloud Security Alliance、略してICSA Ltd. その社長であり、刑事課の犯罪者予知システムCAPSの製作者でもある。
「じゃあ、あたしは遊びモードだって言うの?」
「はい」
「はい…って💦、随分とストレートね」
(しかもママに似て、いい笑顔で💧)
「おっ、美夜ちゃん来たか。早く上がっといで、今から何回目かの乾杯だから」
「蔵ちゃん、キツ〜いのちょうだい」
逃げる様に、ヒールの音が駆け上がって行く。
「おぅ咲、お前もどうだ?」
「神、私はまだ勤務中なのよ。さっさと済ませて、降りて来なさい!」
言うなり荒垣の隣に座り、そこにあったグラスを一気に飲み干した咲。
「咲さんそれ私の…それに勤務中じゃ?」
「大丈夫、ビールじゃ酔わないから」
酔う酔わないとか言う問題ではない💧
「では諸君、浜崎 菊矢さんの堅気への門出を祝って❗️」
「カンパ〜イ🍻!」
盛大な拍手の中で、深々と頭を下げる浜崎。
「金はお前の口座に入っている。マンションは、美夜が見立ててくれてるから、遠慮はいらねぇ。暫くはゆっくり体を慣らすことだ」
「何から何まで、恩にきます」
「とにかく、今夜は飲んで楽しめ。すまねぇが、俺は少し野暮用で下へ行ってくる。怒らせると怖ぇからな」
ポンっと肩を叩いて席を立つ神。
最後の一言で、誰も引き止める者はいない。
タブレットPCを立ち上げ、サイトを開いた咲…ではなくて荒垣。
既に昴もリモート参加していた。
テーブル席の1人を呼ぶ神。
「さて…始めますか」
荒垣の顔から、笑みが消えた。
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