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東京総合病院ER。
まだ若いが優秀な女医の中川美由紀。
シフトを終えて、メンバーに一声。
「お疲れ様で〜す」
「お疲れ様、もう大丈夫そうだな」
ベテランのチーフドクターが声を掛ける。
「はい、おかげ様で」
丁寧に頭を下げ、エレベーターへ向かった。
駐車場出入口で、待つ原田。
すると、写真のAudiニューモデルが現れた。
指示されるままに、追尾を始める。
後ろには、白のベンツがピタリとついている。
(一般道でやるとは、無茶苦茶だな)
とりあえず、車が多い中心街では、見失わない程度に間をおいて走る。
新宿を出て西へ。
420号線、中の通りとの交差点を右折しで北上。
中野駅を潜った所で、モニターに指示が来た。
『徹底的に煽れ』
瞬時に反応し、アウディの後ろ1mにつける。
この時、原田にはある疑念があった。
(間違いねぇな…)
後ろのベンツも、全く遅れずにいた。
原田はそれを試したのである。
「神さん、後ろは昼間のヤツですぜ」
「マジか、煽り屋が撮影側に?」
激しいパッシングに、アウディが加速した。
加速力はフェラーリと互換。
(この女、なかなかやりやがる)
前車を追い越しながら、高速で逃げる。
それに離れず追尾する2台。
「昴、中野署から練馬、板橋署に連絡して邪魔しない様に伝えて」
練馬区から急に細い道へ入り、次々と道を変えて振り回し、振り切るつもりのアウディ。
3台のスポーツカーのスリップ音が、閑静な住宅街に響き渡る。
すると、モニターにメッセージが流れた。
『もう逃しませんよ』
「神さん、完全にバレますぜ、どうします?」
「じゃあ、潰すまでよ!」
「えっ?…今のは誰っすか?」
「桐谷、まさかあんたなの⁉️」
病院の駐車場で事情を話し、中川から車を預かった桐谷は、最初からそのつもりであった。
「あらら、彼女はCIA時代に、国際A級ライセンスを取得してるわよ」
「対策本部の凛が、ラブから聞いた話を伝えた」
「マジッ❗️…って言うか、2人とも誰?」
「フェラーリさん、シッカリついて来なさい!」
アウディがありえないスピードで、細かいドリフトをしながら、更に細い道に入った。
その気配を感じ、原田が対応する。
白煙を上げるタイヤ。
ギリギリで曲がり切った。
「クソッ!」
3番手のベンツは、さすがに間に合わず、次の道で向きを変えた。
国道17号線の新大宮バイパスに出て、ベンツが来たのを見定め、左折してまた細い道に入る桐谷。
細かく進路を変えながら、徐々に距離を離す。
何とか喰らいつくフェラーリ。
車体の重さのハンデを、腕でカバーする。
「フェラーリさん、二つ先を右に。ヤツを誘い込んで赤塚植物園の前で、迎え討つわ」
言われた通り、右折して植物園へ向かう原田。
ベンツからは、その先で右折したアウディは見えていない。
その時。
「翔さん、罠です」
その通信に反応し、直進したベンツ。
「クソッ❗️」
赤塚植物園の前。
フェラーリの真ん前から迫るアウディ。
(早っ⁉️)
すれ違った瞬間、ブレーキを掛ける2台。
「チッ!逃げたわね」
ヒールを履きながら、ゆっくり降りるミニスカ。
サイドミラーでそれを見てから💦 降りた原田。
思わず軽く会釈をする。
「昴さん、無駄だと思うけど追ってみて」
「分かりました桐谷さん」
原田の携帯にメールが届いた。
「まさか、本当にヤクザと警察がグルだとは、驚きました。Good luck.」
野生の勘、生存本能。
そのいずれかが、原田の命を守った。
携帯を見るなり、車から飛び跳ねる。
「ドドーン💥💥」
直後に爆発したフェラーリ。
爆煙の中、転がった原田を抱えて車に乗せ、近くの病院へ走る桐谷であった。
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