【終章】Revenge madness

11/14
前へ
/46ページ
次へ
〜首都高速〜 2台の赤い暴走車は、永田町で地下に潜り、都心環状線との合流地点に差し掛かっていた。 間に合わなかった一般車両を避けながら、時速200キロでのカーチェイスは、かろうじてベンツが前をキープしていた。 「見込み通り、なかなかやるね」 「ヤクザを舐めんな!」 シートベルトにしがみつき、神が答える。 「運転してんのは俺ですけど💧 」 「もうすぐ千鳥ヶ淵。悪いが、行かせて貰うぜ」 大きな左周りのカーブで、右側の首都高速環状線との合流車線へ膨らみかけたフェラーリ。 「しまった❗️」 高速のカーブで、抜きに来るとは思わなかった。 しかし… 「なにっ⁉️」 その真横に、環状線から来た桐谷の車が現れた。 一瞬目が合う2人。 (チッ、あの時の女刑事か!) 仕方なく、慌てて車線を戻す晴翔。 神の携帯が普通に鳴る。 「誰だ、今は手が放せねぇ」 「神、桐谷よ。危うく抜かれるとこだったわ」 「知るか! 運転してんのは原田で、俺じゃねぇ」 そう言う機転は素早い神💧。 「しかし、その重い車体で、よく持ち堪えたわね。さすがは原田さん」 「当たり前ぇだ。ベンツを舐めんな!」 (じ…神さん、そんな…💧) 呆れ果てる原田だか、桐谷がいなければ負けていたショックの方が大きい。 「出口まで5キロ。神はそのまま環状線を。彼が出たら私が追うわ」 そう言った矢先。 フェラーリの左のウィンカーが点滅した。 (まだ早い…ファントムか!) 「神、晴翔に連絡して! 彼が見てるのは偽物の表示よ。この速度で壁に激突したら死ぬわ❗️」 「偽物? 何のことだ?」 説明している暇はない。 そこへ咲からの通信が入った。 「桐谷、晴翔は多分知ってて、死ぬつもりよ。何とか止めて!』 「そんな? それは…させないわ❗️」 意を決した桐谷。 かなり強引に、フェラーリと左側のフェンスの間に、割り込みを試みる。 〜羽田空港〜 管制塔には、緊迫したムードが漂う。 この緊急事態に、青山を呼び出した鈴村。 「君が心配した通りだったな。すまない」 「いえ、あの時点ではまだ確信はありませんでしたから。それより、状況は深刻です」 「部長、チャーター便担当の加藤です。この通り、機の高度が50m低く、侵入位置も左に100mほどズレています」 「機長からは?」 「機体に異常はなく、計器は予定通りの高度で、空港も見えているとのことです」 「どちらかの計器の異常だろうが、空港のランプが見えているなら、機長の方を信用すべきではないか?」 悩み混むところに、機長からの通信が入る。 「羽田管制官へこちらチャーター便機長、今…トーイ・ラブさんに代わります」 聞いていた全員の動きが止まる。 「機長、どう言うことだね?」 「その声は…青山部長さんね、ラブです。当機の高度計は、コックピットに仕掛けられた3D映像による偽物でした」 コックピットに入ったラブは、室内を見回し、小型のキューブを見つけて取り外し、副操縦士と交代した。 「誰がそんなものを?」 仕掛けたのは、出発前にコックピットにも入った、羽間衣千香と確信していた。 「それより、機外に仕掛けられたバーチャル映像システムはどうしようもありません。見えてる空港は偽物の映像であるため、管制塔からの指示と私の…経験とで何とかしてみます」 「勘だと⁉️ それに君はジャンボジェット機の操縦経験はあるのか?」 それには答えず、数値を要求するラブ。 経験などあるはずがない。 「進路修正の数値を教えてください。燃料がギリギリのため、高度は変えず、このまま行きます」 スロットルとフラップレバーに手を添えて目を閉じ、集中するラブ。 ラブの特殊能力。 触れるだけで、機器の情報が頭脳に伝わり、シンクロすることが出来る。 手首に金色のリングが現れ、額には小さな大銀河帝国王家の紋章が光輝く。 「機長、操縦を私に」 管制官から、進路修正の数値が送られて来る。 経験豊富な機長でも、見えてる景色を無視し、目を閉じての着陸は不可能である。 「い…今、切り替えました」 「着陸後の操作はお願いします。小笠原社長は、座席に着いてシートベルトを」 驚きながらも、従うしかない。 数値を機器と共有し、進路を修正するラブ。 「偽物の映像は、見ない方がいいです」 機長と後ろに座った副操縦士に伝える。 目の前に迫った海面に、目を閉じる。 (凛、早く❗️) 珍しく焦り気味のラブの声。 ジェットヘリで上昇し、機銃を向けた凛。 「ラブ、桐谷さん、破壊します!」 「ガガガガガガ💥💥💥…」 強力な弾丸が、ドーム状の建物を粉砕した。 その瞬間。 「見えた❗️」 目を開けた機長が、滑走路を見て叫ぶ。 「何っ❗️」 出口の表示が消え、切り掛けたハンドルを戻しながら、晴翔が叫んだ。 機体は僅かに右にズレてはいたが、無事に着陸し、機長が制動操作を始めた。 管制塔内では歓声が湧き起こる。 晴翔のフェラーリは下りるのをやめ、ベンツを追って加速した。 それを見送って、桐谷は高速を下りた。 (気が済むまで、やってなさい)
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

94人が本棚に入れています
本棚に追加