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〜首都高速〜
2台の赤い暴走車は、永田町で地下に潜り、都心環状線との合流地点に差し掛かっていた。
間に合わなかった一般車両を避けながら、時速200キロでのカーチェイスは、かろうじてベンツが前をキープしていた。
「見込み通り、なかなかやるね」
「ヤクザを舐めんな!」
シートベルトにしがみつき、神が答える。
「運転してんのは俺ですけど💧 」
「もうすぐ千鳥ヶ淵。悪いが、行かせて貰うぜ」
大きな左周りのカーブで、右側の首都高速環状線との合流車線へ膨らみかけたフェラーリ。
「しまった❗️」
高速のカーブで、抜きに来るとは思わなかった。
しかし…
「なにっ⁉️」
その真横に、環状線から来た桐谷の車が現れた。
一瞬目が合う2人。
(チッ、あの時の女刑事か!)
仕方なく、慌てて車線を戻す晴翔。
神の携帯が普通に鳴る。
「誰だ、今は手が放せねぇ」
「神、桐谷よ。危うく抜かれるとこだったわ」
「知るか! 運転してんのは原田で、俺じゃねぇ」
そう言う機転は素早い神💧。
「しかし、その重い車体で、よく持ち堪えたわね。さすがは原田さん」
「当たり前ぇだ。ベンツを舐めんな!」
(じ…神さん、そんな…💧)
呆れ果てる原田だか、桐谷がいなければ負けていたショックの方が大きい。
「出口まで5キロ。神はそのまま環状線を。彼が出たら私が追うわ」
そう言った矢先。
フェラーリの左のウィンカーが点滅した。
(まだ早い…ファントムか!)
「神、晴翔に連絡して! 彼が見てるのは偽物の表示よ。この速度で壁に激突したら死ぬわ❗️」
「偽物? 何のことだ?」
説明している暇はない。
そこへ咲からの通信が入った。
「桐谷、晴翔は多分知ってて、死ぬつもりよ。何とか止めて!』
「そんな? それは…させないわ❗️」
意を決した桐谷。
かなり強引に、フェラーリと左側のフェンスの間に、割り込みを試みる。
〜羽田空港〜
管制塔には、緊迫したムードが漂う。
この緊急事態に、青山を呼び出した鈴村。
「君が心配した通りだったな。すまない」
「いえ、あの時点ではまだ確信はありませんでしたから。それより、状況は深刻です」
「部長、チャーター便担当の加藤です。この通り、機の高度が50m低く、侵入位置も左に100mほどズレています」
「機長からは?」
「機体に異常はなく、計器は予定通りの高度で、空港も見えているとのことです」
「どちらかの計器の異常だろうが、空港のランプが見えているなら、機長の方を信用すべきではないか?」
悩み混むところに、機長からの通信が入る。
「羽田管制官へこちらチャーター便機長、今…トーイ・ラブさんに代わります」
聞いていた全員の動きが止まる。
「機長、どう言うことだね?」
「その声は…青山部長さんね、ラブです。当機の高度計は、コックピットに仕掛けられた3D映像による偽物でした」
コックピットに入ったラブは、室内を見回し、小型のキューブを見つけて取り外し、副操縦士と交代した。
「誰がそんなものを?」
仕掛けたのは、出発前にコックピットにも入った、羽間衣千香と確信していた。
「それより、機外に仕掛けられたバーチャル映像システムはどうしようもありません。見えてる空港は偽物の映像であるため、管制塔からの指示と私の…経験と勘で何とかしてみます」
「勘だと⁉️ それに君はジャンボジェット機の操縦経験はあるのか?」
それには答えず、数値を要求するラブ。
経験などあるはずがない。
「進路修正の数値を教えてください。燃料がギリギリのため、高度は変えず、このまま行きます」
スロットルとフラップレバーに手を添えて目を閉じ、集中するラブ。
ラブの特殊能力。
触れるだけで、機器の情報が頭脳に伝わり、シンクロすることが出来る。
手首に金色のリングが現れ、額には小さな大銀河帝国王家の紋章が光輝く。
「機長、操縦を私に」
管制官から、進路修正の数値が送られて来る。
経験豊富な機長でも、見えてる景色を無視し、目を閉じての着陸は不可能である。
「い…今、切り替えました」
「着陸後の操作はお願いします。小笠原社長は、座席に着いてシートベルトを」
驚きながらも、従うしかない。
数値を機器と共有し、進路を修正するラブ。
「偽物の映像は、見ない方がいいです」
機長と後ろに座った副操縦士に伝える。
目の前に迫った海面に、目を閉じる。
(凛、早く❗️)
珍しく焦り気味のラブの声。
ジェットヘリで上昇し、機銃を向けた凛。
「ラブ、桐谷さん、破壊します!」
「ガガガガガガ💥💥💥…」
強力な弾丸が、ドーム状の建物を粉砕した。
その瞬間。
「見えた❗️」
目を開けた機長が、滑走路を見て叫ぶ。
「何っ❗️」
出口の表示が消え、切り掛けたハンドルを戻しながら、晴翔が叫んだ。
機体は僅かに右にズレてはいたが、無事に着陸し、機長が制動操作を始めた。
管制塔内では歓声が湧き起こる。
晴翔のフェラーリは下りるのをやめ、ベンツを追って加速した。
それを見送って、桐谷は高速を下りた。
(気が済むまで、やってなさい)
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