【終章】Revenge madness

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その時、刑事課の電話が鳴った。 「はい警視庁刑事課、事件?事故?」 素早く咲が取り、スピーカーに切り替える。 「……ごめんなさい、紗夜です」 「紗夜⁉️ どうしてこの電話に? て言うか、大丈夫なの?」 「皆んなに、聞いて貰いたくて」 「紗夜、富士本だが、まだ事件からは離れて、ゆっくり休んでていいんだ」 気遣いながらも、そんな風に出来ないことは、皆んな分かっていた。 「犯罪者とは、違う感情…があるとしたら?」 自信なさ気に、呟く紗夜。 「悪こそ正義、と言うことですか。全く違う次元の倫理ですが、もしあるとしたら、厄介ですね」 紗夜の問いに、真田が答えた。 そしてそこに、忘れられない疑念が浮上する。 「紗夜さん。多分あなたには、気を失うほどのことなのだと思います。でもどうしても私は知りたい。知らないといけない気がするのです」 「真田…」 真田を止めようとした淳一。 しかし、付き合いが長い分、その思いは真田よりも強く、大きな(わだかま)りとなっていた。 「俺からも頼む。辛いだろうが思い出して、教えてくれ。紗夜はあの時、梢枝の心に何を視て、何を感じたんだ?」 もう尋ねた後悔より、必然性への感覚が勝った。 暫しの沈黙が、長く感じられた。 「あの…時…」 小さな声が震えている。 「あの時私は、得体の知れない恐怖を感じた。梢枝さんの心はそこにはなく、別のモノが…居た」 息づかいが荒くなるのを、必死に抑えようとしている呼吸音が聞こえる。 「彼女ではない、別の…モノ?」 沈黙を避ける様に、咲が繰り返した。 「あれを『悪』と呼ぶのは簡単。でも、そんな一文字で表せるほど、小さくはないモノ。『悪魔』ならまだ近いかも知れません」 「悪魔…ですか」 刑事課が関わった事件には、悪魔が関わったものも、幾つかあった。 「私の右手にも、悪魔は居ます。その力があったからこそ、私は救われました。七森華奈さんも、悪魔と契約し、ルシファーの化身となった。菊水千尋さんも邪神阿修羅と化して、悪魔の復活を命をかけて防ぎました」 真田や久宝、桐谷には、断片的な情報しかないが、それらが真実であると感じた。 「アレは、それらとは全く違い…」 紗夜の言葉が途切れた。 次に語られる真実に緊張が走る。 「私に…似ている」 予想外の言葉への衝撃と、奇妙な違和感。 対処できない脳が、一瞬思考を止める。 「そして、私は以前にも…アレに出会った。あの異様な感覚は、今でも忘れていません。同一人物であるはずはない。でもソレと同じモノに…再び出会ってしまった…」 意味深な紗夜の言葉に息を呑み、耳を澄ます。 「プルルルル❗️」 突然、刑事課の内線電話が鳴った。 「うわっ⁉️」 そのタイミングに、驚く皆んな。 「全く…やめてよねホント」 ぶつぶつ言いながらも、いつも通りに取る咲。 「はい警視庁刑事…あ、内線だったわね」 「はい…今、受付にお客様がお見えですが、お連れしてよろしいでしょうか?」 昴が監視カメラ映像を映す。 見覚えのある男性が1人。 「彼は確か…高嶺ワールドトレーディングの高嶺(たかみね) 真純(ますみ)社長じゃないか」 富士本が思い出した。 「ごめん紗夜、大事なところなんだけど…」 「高嶺真純さんは…多分…1人ね?」 「えっ? そう…だけど?」 紗夜には、その訪問の意味が分かった。 そして、これが始まりだということを確信した。 「私が最初に会ったアレは、高嶺…(みやび)です」 「そんなっ⁉️」 まさかの名前。 タイミングよく現れた高嶺真純。 不思議な因縁を感じた。
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