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【2】仮想空間の犯罪者
1年後
〜東京都港区台場〜
AM 8:00
警視庁凶悪犯罪特別対策本部。
組織内の通称『特対』。
数々の難事件を解決し、今や日本の警察や政界から、通称で噂される様にまでなった。
30階建てのビルには、あらゆる部門のスペシャリストが集められ、その3階に刑事課があった。
その入り口。
2人のウェイトレスと、スーツ姿の男女1組。
「どうぞ、お先に」
開いた自動ドアのセンサーに、手をかざす男性。
軽い会釈と笑みが、紳士らしさを際立たせる。
「ありがとうございます」
幾つものトレイを積んだ、配膳台を押して入る。
隣に聳え立つTERRAコーポレーションビル。
そのカフェからの、モーニングサービスである。
「おはようございます」
ピタリと揃った挨拶に、いつもの笑顔。
「おはよ、助かるわ〜毎日ありがとね、あら?」
「お客様の様です、咲刑事」
気付いた咲に軽く会釈し、入って来た男女。
コーヒーと軽食を配り始める2人。
「昴刑事、またお泊りですかぁ?」
刑事課の分析と追跡役、神崎昴。
犯罪者予知システムCAPSと、TERRAの監視システムを使いこなす。
「今回の事件の調査に、バーチャルオフィスを使って情報を集めてたら、ハマっちゃって。このCVW社のプラットフォームと、クラウドシステムは凄いんですよ!最初はゲームから始めたんだけど、リアリティが半端なくて!」
「あ、私もそこでルーム作ってます」
「難しいこと言ってねぇで、早くコーヒーくれ」
「淳、感謝が先でしょ!…すみませんいつも」
そんな淳一と紗夜夫婦に、笑顔で配る2人。
そして、入り口から聞こえる名詞交換。
「おはようございます。朝早くから申し訳ない。
クリエイティブ・バーチャル・ワールドの小笠原と、技術部の羽間と申します」
「刑事部長の富士本と、課長の鳳来です。こんな朝からお越しとは、よほどの事情でしょう。どうぞ中へ」
「すみません。まだ営業前ですよね?」
「い〜のい〜の、うちは24時間営業みたいなものだから、気にしなくていいわ。マリさん…だっけ?コーヒー2つ、追加でお願い!」
「美里ですけど…承りました」
(あらら💦 ミリね、センチじゃなくてミリ)
咲ならではの覚え方であるが…効果は薄い。
応接室へと入って行く4人。
それを見送りながら、考えていた昴。
「Creative Virtual World って…えええェー❗️」
「どうしたんですか、昴さん?」
「久宝さん、今話題のCVW社よ。知らないの? 私も射撃の訓練に利用してるわ」
「そうなんですか、桐谷さん!」
元機密警察の久宝 武史と、元CIAエージェントの桐谷 美月。
「なるほど…さっき昴が言ってたバーチャル何とかかんとかってやつか」
「そうです淳さん。しかも小笠原って言ったら、そこのCEO兼代表取締役ですよ!」
興奮気味の昴より、紗夜の表情が気になる桐谷。
(何か…感じた?)
(はい。今回の事件と関係がありそうです)
紗夜の能力を利用した会話。
念を送れば感知し、頭の中へ返信できる。
と、そこへ…
「あのう…おはようございます」
「おは…よう、えっ!真田さん⁉️」
驚く役の昴。
「ドームシティでは、大変お世話になりました。本日付けで中央署から転属の真田 空羽です。よろしくお願いします」
「クウ?」
ツッコミ役の淳一。
「アハッ、さすが特対。普通は皆んな聞き返すんですけどね。空に羽と書いて、くうと読みます」
桐谷、紗夜、久宝、昴の超感覚は、彼に普通ではないものを感じていた。
(あの時とは、まるで別人…)
(ですね、紗夜さん)
昴にも多少の読心能力があった。
「どうかしらご感想は?うちの受付嬢達は、なかなかなものでしょ?」
試す桐谷。
「伊東美和さんは、スマホを隠してたから彼氏がいるんでしょう。磯和佳苗さんは、髪にネコの毛が付いてました。私はネコアレルギーなんですよ、それもあの毛色と長さからして、シャムかアメショ。あの鋭い目つきも苦手ですね。それより、私服警備員の彼女に惹かれました。座って化粧を確認する振りで、コンパクトで私を見てくれてたし。スマホじゃ警戒されるから、今時化粧道具を使うとは、かなりデキると感じました。17ある監視カメラは、内7つはダミーで、3つは熱と金属センサー内蔵の優れ物。お隣のTERRAの技術ですね。昴さん私の生体分析と声紋分析は気に入ってもらえたでしょうか?」
昴に問いながら、桐谷を見る真田。
「分かったわよ、試して悪かったわ」
「恐縮です、桐谷さん」
「超感覚的状況認識能力と完全記憶脳…ですね。実際に会ったのは、真田さんが2人目です」
(もう1人は、ラブさんですね? 紗夜さん)
(全てお見通しの様で、心強いわ)
「まぁ…あの花山警視総監様の御墨付きだ。よろしくたのむぜ」
「なかなかの名演技でしたよ、淳一さん。亡くなられた戸澤さんの代わりにはなれませんが、お役には立てると思います」
ニヤリと笑う淳一。
そこで、刑事課の電話が鳴った。
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