【2】仮想空間の犯罪者

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〜千代田区日比谷〜 日比谷公園と皇居外苑に挟まれた国道1号線が、晴海通りから日比谷通りへと、90度向きを変える大きな交差点。 「うひゃー、ひでぇなこりゃ」 1番に着いた淳一の第一声。 大混乱する中で炎上している車と、巻き込まれた十数台の車。 「紗夜、とりあえず私と久宝は監視カメラをあたるから、2人は周囲からスマホ映像を集めて。 「分かりました桐谷さん」 そう答えながら、言い争う2人が気になった。 「またお前達か、まずは事態の収集が先決だ、皇居の目の前で、4車線道路同士の混乱を早く何とかしないと、本庁の対応を問われかねない」 「それは分かるが、事件性も否めない今、捜査の邪魔はしないでくれ。行機(こうき)は、周辺の交通を整理して、遮断することに専念すべきだ」 警視庁交通部所属、交通機動隊の絹峰(きぬみね) 司紗(つかさ)と、同じく警視庁刑事部所属、交通捜査隊の神田(かんだ) 志郎(しろう)隊長である。 「失礼します、警視庁特別対策本部の宮本紗夜です。今は被害者の救出が急務。機動隊の方は所轄と消防を統率して、救急車と消火隊の誘導をお願いします。捜査隊の方は、目撃者や映像の収集に協力をお願いします」 「君があの特対の紗夜刑事…か?」 その活躍と名声を、警視庁で知らない者はない。 「早く❗️」 「あ、あぁ分かった!志郎、この話はまたな」 「仕方ない、司紗は変わらないな全く」 (2人は同期なのね…なるほど) 対立理由を悟った紗夜に、昴の通信が入る。 「紗夜さん、今ネットにライブ中継が流れていて、今のも映っています!」 直ぐに辺りを見回す紗夜。 「J-TV特報部の佐藤です、通してください」 許可証を見せ、中へ入る男性がいた。 向かおうとした紗夜の前を、野次馬達が遮る。 諦めて周囲のカメラを探す紗夜。 (あった!) 「昴さん、事故側と反対側の外苑通りの信号機についてるカメラで、その報道関係者の顔写真を送ってください」 「はい。この人…事故発生時から撮影してます。怪しいですね。見つけました、送ります」 スマホを取り出し、電話をかける紗夜。 「はいもしもし、JAPAN-TVの柴咲(しばさき)です。紗夜さん?」 「紗夜です。希美(のぞみ)さん、報道部に佐藤って言う人いますか?今写真も送りました」 「今事故現場なのね紗夜さん。えっと…佐藤はいるけど…こんなヤツじゃないわ、全然違う」 「ありがとうございます。やっぱり偽者ね」 「J-TV(うち)なら、事故現場にも入れるからね。今教えて貰って見たわ。酷い事故ね〜完全に信号無視で突っ込んでる。何でも協力するから、遠慮なく言って」 「助かります、では」 電話を切ったところに昴から。 「紗夜さん、奴を見失いました」 「この状況では仕方ないわ、念のため皆んなと、本庁交通機動隊と交通捜査隊にも、写真を送っておいでください」 「犬猿の対立部署ですね…了解です」 「紗夜、広い交差点だ、通行人よりドライブレコーダーを回収した方が良さそうだぜ」 「そうね、淳はそっちをお願い」 昴から送られて来たURL。 (D-Moment…暴走車はこの車ね。…えっ?) 動画に映るスポーツカー。 明らかにスピードもオーバーしている。 運転手を確認しようと拡大し、それに気付いた。
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