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「これは…」
突然現れた遥香の"心の番人"と名乗る少女から案内されたのは、謎の洞窟だった。遥か先まで続いている。
道は多少荒れているものの進めないほどではない。が、吹雪のように舞う雪が行く手を阻み、白い岩が行く手を遮るように両脇から互い違いにそびえている。試しに触れてみるととんでもなく冷たい。
「それは氷ですよ」
淡々と少女は言う。
氷か、だとしたらここは、さながら氷の洞窟か。
「ここが彼女の心の中です」
皆同じように、振り返って少女をみた。
「ここが心の中?バカ言うな」
高梨 悟が声を荒らげる。
「そう思われることも無理はありませんが、事実なのです」
少女は悟のきつい口調にも動じることはなく、低く抑揚のない声で答える。
「ふざけるな、俺は帰るぞ」
「帰るのならば、二度とここには来れませんが、それでもよろしいですか?」
「心の番人とかいっているが、俺たちを騙そうとしてるだけだろ」
イライラしているのか、きつい言葉を次々とぶつける悟。気持ちはわからなくないが、あまりに辛辣過ぎないかと思ってしまう。
「私が、心の番人と証明する術はありません。信用出来ないのであれば、元の世界へお連れします」
否定も肯定もしない少女の様子を見るに、これまでも今も、嘘は無いように思える。あくまでも僕の主観と直感でしかないのだが。
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