氷の洞窟

2/6
前へ
/20ページ
次へ
 「これは…」  突然現れた遥香の"心の番人"と名乗る少女から案内されたのは、謎の洞窟だった。遥か先まで続いている。  道は多少荒れているものの進めないほどではない。が、吹雪のように舞う雪が行く手を阻み、白い岩が行く手を遮るように両脇から互い違いにそびえている。試しに触れてみるととんでもなく冷たい。  「それは氷ですよ」  淡々と少女は言う。  氷か、だとしたらここは、さながら氷の洞窟か。  「ここが彼女(はるか)の心の中です」  皆同じように、振り返って少女をみた。  「ここが心の中?バカ言うな」  高梨 (さとる)が声を荒らげる。  「そう思われることも無理はありませんが、事実なのです」  少女は悟のきつい口調にも動じることはなく、低く抑揚のない声で答える。  「ふざけるな、俺は帰るぞ」  「帰るのならば、二度とここには来れませんが、それでもよろしいですか?」  「心の番人とかいっているが、俺たちを騙そうとしてるだけだろ」  イライラしているのか、きつい言葉を次々とぶつける悟。気持ちはわからなくないが、あまりに辛辣過ぎないかと思ってしまう。  「私が、心の番人と証明する(すべ)はありません。信用出来ないのであれば、元の世界へお連れします」  否定も肯定もしない少女の様子を見るに、これまでも今も、嘘は無いように思える。あくまでも僕の主観と直感でしかないのだが。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加