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13.ガトー・ショコラ・ブラック
一方その頃、アイス・ランド王国の国王誕生祭に来訪者が現れていた。
友好国であり同盟国でもある、隣国の王族が贈物を持ち使者として訪れたのだ。
隣国、獣人の国(ショコラ・ランド王国)の第六王子。
ガトー・ショコラ・ブラック(14歳)。
まだ幼いながらも、野性的で知的でもある端正な顔立ちをしている美少年だ。
隣国の王族の特徴でもある褐色の肌に、艶やかな黒髪と同色の狼の耳と尻尾が付いている。
護衛であろう頑強そうな青年と、側近であろう聡明そうな青年の、犬耳尻尾の付いた御供を連れていた。
「ショコラ・ランド王国より使者として参った、第六王子だ。祝いの品を持参した。国王陛下への御目通りを願いたい」
ガトー王子がその旨を案内の者に伝えると、案内係はじろじろと値踏みするような目で見下ろす。
そして、案内係は鼻で嗤うような笑みを浮かべて、ガトー王子一行に言った。
「ああ、魔法の使えない獣の国の王子様ですか。それはそれは、遠路遥々ご苦労な事です、ほほほ。……しかも、第六王子殿下ですか、随分とこじんまりとした御一行で……まぁ、本来なら国王や王太子がいらっしゃるべきかと存じますが……まぁ、良いでしょう……幸いにして我が国の国王は寛大で慈悲深いお方です。どんな身分の者であっても、快く受け入れてくださるでしょう。国王の偉大さに感謝なさるのですね、ほほほ。……さぁ、客室へご案内します。どうぞこちらへ」
そんな物言いに不快になりながらも、ガトー王子は本国の使命の為に、引きつりそうな表情を抑えて微笑み返す。
「……ああ、そうなら有難い……」
「「…………」」
御供達は黙って見守り、苦虫を潰したような表情で案内係を睨んでいた。
ギリギリと奥歯を噛みしめる音が聞こえてくるが、案内係は意にも介さない様子で部屋へと案内していく。
アイス・ランド王国は魔法使いの国で、隣国ショコラ・ランド王国は獣人の国だ。
魔法使いの国の人間は魔法の使えない獣人を獣と称して、侮蔑する傾向がある。
それは、魔法能力を最も尊ぶ魔法使いにとって、魔法を使えない人は人未満、人にあらずといった思想が要因だ。
もちろん極端な思想であって、獣人を人として認識していない訳ではないのだが、蔑視する者が少なくないのは事実だった。
平民より貴族が、貴族より王族が、強大な魔力を持つ者は地位が高い傾向にあり、王侯貴族や王城に務める者などは尚の事その思想が強い。
表向きは友好国である為、表立って侮辱する事は本来は無い筈なのだが――訳あって、国力差が出て来てしまった為、悪感情が言動や行動に顕著に表れてしまっている。
侮蔑の感情を隠していたとしても、五感の鋭い獣人には言動や行動から、嫌でも感じ取れてしまう訳なのだが。
本来は王侯貴族用の豪華な貴賓室に通されるべきなのだが、先触れを出していたにも関わらず、もたもたとおざなりな扱いを受け、ガトー王子一行は予備の質素な客室へと通された。
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