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14.アーモンド・ショコラ&マカダミア・ショコラ
「では、またお迎えに上がりますので、こちらでお待ちください」
案内係はガトー王子一行を部屋に通すと、扉を閉めてさっさと立ち去って行った。
扉が閉まると同時に、ガトー王子の御供達はふるふると震え出して、耐え兼ねたかのように護衛が声を張り上げる。
「……なんなんだ、アイツ等の態度は! 腹に据えかねる!!」
ガトー王子の護衛、アーモンド・ショコラが憤慨し声を荒げた。
ガトー王子の側近、マカダミア・ショコラも遺憾を訴える。
「我々が同盟国の盾となり戦い続けているおかげで、こうして豪勢な催しなどしている余裕があるというのに、恩義の感情など一切感じられません!」
国家情勢として、長年に渡り隣国ショコラ・ランド王国並びに同盟国と敵対国は激しい攻防を繰り広げてきた。
敵対国と隣接するショコラ・ランド王国は同盟国の中でも常に最前線に立ち、同盟国の盾となり、獣人の優れた戦闘能力で以て不要な紛争を避けながらも、戦い続けてきたのだ。
御供二人はグルルルルと唸声を上げて、地団太を踏む勢いで叫んだ。
「「それにあの、ガトー殿下に対しての態度! 度し難い(許せません)!!」」
現在は敵対国との戦力差は拮抗しており冷戦状態にあるのだが、いつまた戦争の火蓋が切って落とされるか分からない状態だった。
戦況を有利なものとするには、同盟国の協力体制が必要不可欠なものとなり、極力、同盟国との関係を良好なものとして保っておく必要があるのだ。
同盟国に友好を示す意図があり、こうして王族自らが使者として来訪している。
ガトー王子は本国の使命の為に、どんな無礼な扱いをされようとも関係を損なうような事はできないのだ。
ガトー王子は己の為に憤慨して毛を逆立てている御供達の姿を見て、不快な気分が和らぎ口元を綻ばせて呟く。
「ふふ、お前達のおかげで俺は胸がすく……」
ソファにゆったりと腰掛け足を組むガトー王子とは対照的に、怒り心頭のまま御供達は右往左往としながらガトー王子の身を案じる。
「魔法使いの国の選民思想は噂には聞いていたが、ここまでとは……他国の王族にまで無礼が過ぎる! 使命でも無ければ無礼討ちにしてやりたい所だ!!」
「友好を示す為とは言え、こんな無礼な扱いを平気でする国へ、ガトー殿下を遣わすなんて、国王陛下も酷な事をなさいます」
「王族を王族とも思わないこの扱い、何をされるか分かったものではない! ガトー殿下に何かあったらどうするのだ!!」
「それに、最近この国の怪しい噂もちらほらと耳にしますし、十二分に注意しなければなりません……」
ガトー王子はそんな御供達の言葉に逡巡して答える。
「俺は末王子で呪われ王子だからな。優秀な兄王子達の代替にもならん。……もし、俺に何かあったとしても、本国の痛手にはならんだろう。俺が使者として遣わされるのは、妥当な所だ」
「ガトー殿下、そのような……」
「ガトー殿下は決して呪われなどでは……」
御供達はガトー王子を心配そうに見つめて、肩を落とし耳と尻尾が垂れる。
落ち込んでしまった様子の御供達を見て、ガトー王子は申し訳なさそうに眉を顰めて言う。
「お前達にはいつも苦労をかけさせてしまっているな。……俺に付き合わせて、ここまで連れて来てしまった…………すまない」
「ガトー殿下! どうかそのように仰らないでください……私共は自ら望んで殿下に御仕えしているのですから!!」
「そうです! 当然、私もガトー殿下の護衛を誇りとしています!! どこまででも御供しますとも!!!」
耳と尻尾を立てて宣言する姿を見て、ガトー王子は御供達が本心でそう思っているのだと分かる。
「ああ、心強いな」
ガトー王子は穏やかに微笑み、無意識に尻尾が小さく揺れていた。
それに気付いた御供達の尻尾は、忙しなくパタパタと振られるのだった。
間もなくして部屋にノックの音が響き、迎えにきた案内係に移動を促される。
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