事故物件

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事故物件

 俺はその日。不動産屋さん待ち合わせをして賃貸物件の内覧に来ていた。 「へー。この物件。こんなに良い条件なのに、ずいぶん安いんですね?」  すると不動産屋さんの表情が曇った。 「あー。はい。その。実はですね。この物件。でるんですよぉ」 「でる?」 「えぇ。これが」  手でオバケの仕草。そして続けて言った。 「大家さんもほとほと困ってましてね」 「へぇ」  これってもしかしてラッキーかも。幽霊? 馬鹿馬鹿しい。いるかそんなもん!  この時の俺はそんなことを考えていた。 「この部屋にします」 ※ ※ ※  引っ越しを全て終え、部屋で過ごす一日目。今のところ特に異変はなし。 「やっぱな。幽霊なんて居るわけ無いじゃん」  そう言った瞬間。部屋でピシィという音が鳴り響く。 「おっ? 家鳴りか?」  またピシィという音が鳴り響く。 「マジか?」  でも、まぁこの程度なら問題ないかな? そう思っていた。  その日の夜。  夜中にふと目が覚める。 「っ!」  体が動かない。金縛り? 動揺する俺は何とか体を動かそうと全身に力を込めるが、指先一つ動かせない。  そして俺は、とうとう見てしまう。足元から這い上がってくる怒りの形相をしたお婆さんの姿を。  その日はそこで気を失った。  翌朝。  全身汗だくで目が覚める。 「夢?」  それにしては随分リアルで……  そう思った時。またピシィと家が鳴った。  俺は怖くなって、早々に学校に行く準備をして、その日は家に帰らず友人の家に泊めてもらった。  とはいえ、いつまでも友人宅に居続けることは出来ない。  三日目のお昼。  恐る恐る。家に帰る。  家に足を踏み入れた瞬間。  また家が鳴った。 「勘弁してくれよ」  俺は回れ右をして家を出て、そのまま友人に連絡をする。すると近所に有名な霊能者がいるから見てもらおう。という話になった。  数時間後。さっそく来てくれた霊能者さんに心ばかりのお金を支払う。 「お願いします」  霊能者さんに見てもらった結果。確かにお婆さんが部屋に居るという。  なんでもここは私の家だから出て行けと言っているのだそうだ。  執念が凄ぎて祓うのは難しい。早めに引っ越したほうが良いよ。というアドバイスを残し霊能者さんは帰っていった。  仕方がないのでその日もまた、友人宅に泊めてもらう。  しかしだんだん腹が立ってきた。  幽霊なんて死んだ人間の残りカスだ。ここは生きている人間の住む世界だ。死んだ人間がいつまでも居続けることの方がが間違っているんだ。  なんで生きている俺が遠慮して出て行かなきゃならないんだ?  沸々と怒りがこみ上げてくる。  そうだ。俺は間違っていない。家賃は俺が支払っているんだ。それなのに婆さんに部屋を占拠されている。  ふざけんな。そうだ。あそこは俺の家だ。俺が家の主だ!  四日目の早朝。  自宅に足を踏み入れる。  やはり家が鳴る。  しかし俺は屈しない。それどころか俺の中で怒りが爆発する。 「クソババア。そんなに部屋を出て行って欲しけりゃ退去費払えや! 払わねぇ限りオレは出て行かねぇぞ!」  俺が吠えたと同時に家が鳴る。  しかし 「引越し費用がねえんだよ。学生舐めんな! ババアの方こそさっさと往生しろや! 俺はあんたが退去費用出すまで出て行かねえからな!」  こうして俺と婆さんの霊との奇妙な同居が始まった。 ※ ※ ※  それから半年後……  最近では、婆さんとコミュニケーションが取れるまでになった。 「婆さんお供えした飯、どうよ?」  ピシィ(美味い!)  
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